衆院選の投票に併せて、最高裁裁判官の国民審査が実施される。
辞めさせるべきだと考える裁判官に「×」をつける。有効票の半数を超えると罷免される。「○」など他の印を書くと無効になる。
適任かどうかを審査することによって、国民が司法への評価を示す機会である。じっくりと考え、1票を行使したい。
最高裁は「憲法の番人」といわれる。国会が制定する法律や、行政の命令が、憲法に違反していないかどうかを判断する。
争いごとや刑罰の適用に最終的な結論を出す役割もある。判例として社会的なルールになり、国民の暮らしに影響する。
今回は、全15人の裁判官のうち11人が対象となる。全員が審査された1949年の第1回を除くと最多である。
判断材料になるのが、関わった裁判で示した考え方だ。最高裁の結論は多数決で出され、各裁判官の賛否やその理由が明示される。
夫婦別姓を認めなかった6月の決定には、対象者のうち7人が関わった。同姓を義務づける民法の規定について4人が合憲、3人が違憲との見解を示した。
これらは、最高裁のホームページなどで確認できる。報道各社はアンケートをもとに経歴や心構え、人となりも紹介している。
この制度では延べ179人が審査を受けたが、罷免された人は一人もおらず、形骸化が指摘されている。最も「×」の割合が高い人でも15・17%だった。
国民が直接、司法のあり方に意思表示できる唯一の手段だけに、改善に向けた議論が欠かせない。投票用紙に何も書かなければ「信任」したことになる仕組みの見直しも検討すべきだ。
そもそも最高裁裁判官の選任過程が不透明なことが、制度への関心が高まらない一因だろう。内閣は選んだ理由や経過について、丁寧に説明する責任がある。
最高裁を身近に感じてもらう努力も必要になる。裁判員制度が始まって12年たつが、多くの国民にとって、まだ司法は遠い存在だ。
近年、最高裁は法廷で、裁判の概要や争点を記した書面を傍聴者に配布している。今後は多くの人が審理を見られるオンライン中継の導入も検討課題だ。
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