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被団協の坪井さん死去 「核なき世界」を諦めない

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 「ネバーギブアップ(決して諦めない)」。そう言い続け、「核兵器なき世界」の実現を訴えた人生だった。

 日本原水爆被害者団体協議会の代表委員などを務めた坪井直(すなお)さんが96歳で亡くなった。長年、核廃絶運動をけん引した。

 広島での自らの被爆体験を語り継ぎ、核兵器の非人道性を告発してきた。

 20歳の時、爆心地近くで被爆し、全身に大やけどを負って約40日間、生死をさまよった。後遺症に苦しみながら、中学校の教壇に立ち「ピカドン先生」と名乗って、生徒に原爆の災禍を伝えた。

 定年退職後は海外での活動を通じ、人類全体の問題として核問題を考えるようになったという。

 欧米をはじめ、パキスタンや中国、北朝鮮など21カ国を訪れ、国際会議では「ノーモア・ヒバクシャ」と訴え続けた。

 坪井さんら被爆者が海外で証言活動をねばり強く続けたことで、核兵器の非人道性が世界に広く知られるようになった。それが核兵器を違法とする核兵器禁止条約の発効につながった。

 「(原爆投下は)人類の間違ったことの一つ。それを乗り越えて我々は未来に行かにゃいけん」

 2016年5月、米国の現職大統領として初めて広島を訪れたオバマ氏にこう語りかけた。憎しみからは何も生まれないという信念から平和を願った言葉だった。

 残された課題は重い。

 国際情勢は厳しい。世界の核弾頭数は約1万3000発に上る。米国とロシア、中国の対立は続き核軍拡競争の終わりが見えない。

 日本は、米国の「核の傘」の下にいることを理由に禁止条約に参加していない。核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任するが、唯一の戦争被爆国としての役割を果たせていない。

 被爆者は約12万7000人まで減り、平均年齢は84歳に迫っている。長崎で核廃絶運動をリードしてきた谷口稜曄(すみてる)さんも17年、鬼籍に入った。被爆者がいない時代がいずれ訪れる。

 「険しい道が続くのかもしれないが、忌むべき兵器を世の中から無くすよう諦めずに進んでいきたい」。坪井さんの思いを次世代が引き継がなければならない。

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