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少子化考

世界各地を記者が歩きながら、少子化社会の課題や、子どもを持つ意味、家族の幸せとは何かを考えます。

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ヒト女性がイルカの子を産む未来は? “社会通念”を疑う問題提起

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絶滅危惧種の動物を代理出産するという議論を提起した作品「私はイルカを産みたい…」=長谷川愛さん提供
絶滅危惧種の動物を代理出産するという議論を提起した作品「私はイルカを産みたい…」=長谷川愛さん提供

 少子化に歯止めをかける手段としても注目される生殖補助医療。しかし、最新技術の実用化の前にはいつも倫理的な課題が立ち塞がる。技術活用の前提となる社会通念、倫理とはそもそも何なのか。生殖に関するテクノロジーと人間の未来をコンセプトに問題提起するアーティスト、長谷川愛・京都工芸繊維大特任研究員に話を聞いた。【聞き手・日下部元美】

テクノロジーが変える社会を考える

 Q 長谷川さんは何をしているアーティストなのでしょうか。

 ◆いつもどのように説明すれば良いのか迷っているのですが、端的に述べるとテクノロジーと私たちの行く先を考え、想定される未来像をデザインすることで、社会に問題提起しています。英国のロイヤル・カレッジ・オブ・アート(王立芸術大学院)で、課題解決のためではなく議論を提起する「クリティカル(批判的)デザイン」や「スペキュラティブ(思索的)デザイン」を学びました。今、まだ私たちの手に落ちてきていないテクノロジーを将来市民が手にした時にどういうことが起きるのかを作品にしています。テーマとしては、生殖補助技術などを扱っています。可能性を広げるための技術のあり方を考えた時、私は特にマイノリティーである人々の欲望やニーズに焦点を当てています。

 例えば、子供を持つ、持たない、養子を迎える、代理母になる、という選択肢のどれもしっくりこない人はどうすればいいのでしょうか。今後子供ではなく絶滅危惧種などの動物を代理出産してみたいと考える人が出てくるかもしれません。そこで2013年に「人間がイルカを産む」ことを題材にした作品を作りました。イルカを産むにはどのような技術が必要なのか科学者にヒアリングし、社会でどのような議論が起こることが予想されるのかを調べ、水中出産のシミュレーション映像を作ったり、プロジェクトを行う上で自分が抱いた葛藤や疑問をフローチャートにしたりしました。

男性偏重の環境で倫理を決める違和感

 Q なぜマイノリティーのニーズに焦点を当てるのでしょうか。

 ◆近年、生物学の分野では女性研究者が比較的増えていますが、今でも科学の世界は男性中心的な社会です。つまり、彼らが良いと思う社会の中で生殖技術のあり方が決められている。ところが、…

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