東京五輪で痛感「日本の文化は貧しい」建築家・伊東豊雄さんの慨嘆
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東京五輪・パラリンピックで繰り広げられた数々のドラマに、胸を熱くした人は多いだろう。そのメイン会場となったのが国立競技場だった。だが振り返ってみると、デザインを選定する段階で、かなりの「ゴタゴタ」があった。紆余(うよ)曲折の末に行われたデザインコンペで、最終選考に残ったもののあと一歩届かなかったのが建築家の伊東豊雄さん(80)だ。伊東さんの目に国立競技場や五輪はどう映ったのだろうか。改めて尋ねた。【平林由梨/学芸部】
記者が驚かされた発言
6年前のことだ。当初のデザイン案は、「アンビルト(建物が立たない)の女王」と呼ばれた故ザハ・ハディドさんのもの。だが「コストがかりすぎる」などと批判が高まり、政府は突然白紙撤回した。その後、仕切り直しのコンペが行われ、伊東さんが挑戦したが、最終選考でわずか8点差で敗れた。選ばれたのはご存じの通り、隈研吾さん(67)らのデザインだった。
伊東さんに、現在の国立競技場の印象を尋ねた。すると「僕は負けたんで控えた方がいいんでしょうが……」と声を落としてから、こう言い切った。
「一言で言えば凡庸なものになりました」
私(記者)は「凡庸な」という発言に驚いた。あまりに踏み込んだように聞こえたからだ。それでも伊東さんの「嘆き」は止まらない。「3兆円超とも試算されている五輪開催費をかけて、何をしたかったのかな、と。コロナのせいだけでは決してないはずです。東京アクアティクスセンターも有明アリーナも、どれも同じような、…
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