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性別にとらわれず自分らしく生きるために、声を上げる人たちが増えています。当事者の思いや社会の課題を追います。

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トランスジェンダーの「ありきたりの幸せ」当事者が実像伝える冊子

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トランスジェンダーについて伝えようと製作された冊子「トランスジェンダーのリアル」=藤沢美由紀撮影
トランスジェンダーについて伝えようと製作された冊子「トランスジェンダーのリアル」=藤沢美由紀撮影

 「トランスジェンダーのリアル」を知ってほしい――。当事者らの切実な願いを込めた冊子が完成した。トランスジェンダーを巡っては近年、インターネットを中心にデマを流したり攻撃したりする動きが広がり、深刻な状況になっている。冊子を通じて多様な当事者の姿を伝え、差別に対抗する輪を広げようと取り組む人たちに取材した。【藤沢美由紀/デジタル報道センター】

SNSでの攻撃が激化

 トランスジェンダーとは、出生時の戸籍の性別とは異なる性別を自認する人を指す。例えば、トランスジェンダー女性(トランス女性)は、出生時の性別は男性で自分を女性と認識している人のことだ。

 冊子は、カラーで全32ページ。当事者5人がそれぞれの人生や思いを語った手記の他、医療や学校、職場に関する体験や情報なども盛り込んだ。冊子を企画したのは、LGBTなど性的少数者の若者の支援を行う一般社団法人「にじーず」代表で、自身も当事者である遠藤まめたさん(34)だ。背景には近年、ツイッターなどSNS(ネット交流サービス)で当事者たちへの攻撃が激化している状況がある。

 2018年、お茶の水女子大がトランスジェンダーの女子学生の受け入れを発表した後、SNS上ではトランス女性をあえて男性扱いしたり、「性犯罪者と見分けがつかない」などと攻撃したりする書き込みが増えた。そうしたヘイトは、特に公共のトイレや公衆浴場、更衣室などの女性専用スペースの利用を巡り、トランス女性がまるで女性たちの安全を脅かすかのように不安をあおる内容が多く、女性の人権問題に関心の高い人たちにも影響が広がりやすい状況がある。

 遠藤さんは、トランスジェンダーの人たちの実際の姿を知る機会が少ないことも事態悪化の一因と感じ、「トランスジェンダーという属性としてではなく、一人一人違う人間としての姿を伝えられたら」と考えた。また、ネットでの議論は非難の応酬になって建設的な議論をしにくいとして、差別に反対する人たちが知人に気軽に渡せるよう、紙の冊子にすると決めた。当事者と支援者による製作委員会を作ってクラウドファンディングを実施したところ、想定を超える約200万円もの寄付が集まり、今年9月末に完成した。

男だった過去、女である今、どっちも自分

 「私の1日は犬の散歩から始まる」。そんな書き出しで始まる手記を冊子に寄せたのは、兵庫県で夫と焼き芋屋を経営するトランス女性の河上りささん(38)。2匹の子犬、「ポテト」と「バジル」を連れて近所の漁港を歩き、夫を仕事に送り出し、掃除をして……という「ありきたりで幸せな」日常を、半生とともにつづった。

 当たり前に自分を女の子と思っていたのに、それは間違いらしいと気付いたのは6歳の頃。18歳からショーパブで「ニューハーフ」として働き、24歳からはトランスジェンダーであることを隠して女性として生きた。

 転機は31歳の時。5年間交際した男性と婚約の話が持ち上がると、子どもができないことなどを理由に相手の父親に猛反対され、結局一方的に別れを告げられてしまった。そんな事態に直面しても誰にも打ち明けることができず、トランスジェンダーであることをひた隠しにする生活に疑問を感じた。その後、当事者と関わるようになった中で、「男だった過去の自分も、女として生きる今の自分も、どちらも自分」と受け止められるようになったという。

「隠していても世の中変わらない」

 河上さんは現在、トランス女性であることを明らかにし、「語り部ユーチューバー」という肩書で動画投稿サイト「ユーチューブ」で発信もしている。

 きっかけは昨年、トランス女性の友人がツイッター上で激しく攻撃され、河上さんも巻き込まれたことだ。やりとりをする中で、「アンチ」の人たちはトランス女性に対して現実とはかけ離れた像を思い描いているように感じた。「テレビで見かける、男性芸人が女装をしている時のようなイメージを持たれている気がして、もっと普通に日常生活を過ごしている当事者もいることを伝えなくてはと思いました」

 発信を続ける中で、心ない攻撃にさらされることはよくある。それでも河上さんは「隠れて黙っていたら世の中は変わらない。私たちが当たり前に生きられる社会にするには、姿を見せて声を上げる人が必要です。当事者の誰もがそうすべきなのではなく、できる人がすればいいと思っています」と話す。

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