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鼎談<疫病と文学> 鴻巣友季子、鹿島茂、池澤夏樹

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イラスト・寄藤文平
イラスト・寄藤文平

 ◆疫病と文学 鼎談(ていだん)

 ■評者 鴻巣友季子(翻訳家) 鹿島茂(仏文学者) 池澤夏樹(作家)

 ■推薦・鴻巣氏

 ◆白の闇 ジョゼ・サラマーゴ著、雨沢泰・訳(河出文庫・1430円)

コロナ禍 怖さ再注目

 鴻巣 日本では2001年に刊行されたが、コロナ禍で再び注目され昨年、文庫化された。「失明感染症」のような伝染病がブレークアウトするが、原因はなかなか解明されず、治療法やワクチンもないという、コロナ禍を想起させる状況になる。さらに新型コロナウイルスを連想させるのが、発症した者や濃厚接触者を政府が巨大な病院に集めて封鎖することで、中国・武漢の対応をはるかに強化したやり方だ。著者はポルトガルの作家で、作品には固有名詞や人物名が登場しないが、ポルトガルのファシズム政権を風刺しているのではないかと思う。

 病院内のモラルの崩壊や人心の荒廃は、すさまじい描写力で描かれている。腕力と武力を持った男たちが権力を掌握し、供給される食糧を手に君臨する。ディストピアのような荒廃した狭い世界で、食糧や安全と引き換えのレイプが行われていく。女性がこれを読むのはきついと思うが、保安と性の交換は、これまでも歴史上で繰り返されてきた。

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