特集

今週の本棚

「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。

特集一覧

今週の本棚

本村凌二・評 『歴史とはなにか』=鈴木董、岡本隆司・著

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
『歴史とはなにか』
『歴史とはなにか』

 (山川出版社・1760円)

「自世界中心史観」のくびき自覚

 学生のころ覚えた独語でホイリスティッシュ(heuristisch)という言葉があり、「発見的な」というほどの意味である。オスマン帝国史の泰斗と気鋭の中国史家の対談である本書を読みながら、あらためて言葉のもつ含蓄にふれた気がした。

 それはともかく、なによりも、ご両人ともそれぞれ独自に「世界史」の通史を上梓(じょうし)しており、それだけに専門領域の研究者相互の比較史をはるかに超えた拡(ひろ)がりと深さをもっている。まずは、世界史をバランスよく見ていくにはどうしたらいいのか、それが問題なのだ。昨今のグローバル・ヒストリーなる新味そうな議論も、大航海時代以降の西欧に巻き込まれた地域全体に目配りするだけであり、「所詮は西洋史だ」という指摘はまことに手厳しい。

 その根底には、文化圏の差異を視野に入れていないどころか、見ようとしないところがある。名高いF・ブローデルなども生態環境の違いには配慮していても、文化の差異を軽視しているのが気になるらしい。たとえば地域ごとに異なる料理の作り方があることは軽んじられている。逆の例をあげれば、生態環境は異なっていても、トルコ料理とウイグル料理とは似ているところがあるという。

この記事は有料記事です。

残り839文字(全文1375文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集