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トップに聞く 社会を前向きに変革する人材を育成 叡啓大・有信睦弘学長

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ありのぶ・むつひろ 1947年生まれ。76 年、東京大大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了(工学博士)。 同年から2008 年まで東京芝浦電気(現・東芝)に勤務し、研究開発センター所長などを歴任。東京大監事、理化学研究所理事などを経て、18 年、同大学執行役・副学長。21年4月、叡啓大学長に就任 拡大
ありのぶ・むつひろ 1947年生まれ。76 年、東京大大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程修了(工学博士)。 同年から2008 年まで東京芝浦電気(現・東芝)に勤務し、研究開発センター所長などを歴任。東京大監事、理化学研究所理事などを経て、18 年、同大学執行役・副学長。21年4月、叡啓大学長に就任

 広島市の中心部に今年4月、新しいタイプの公立大・叡啓大が開校した。広島県の公立大としては5校目の大学で、ソーシャルシステムデザイン学部のみの単科大だ。入学定員は100人、うち20人が留学生というコンパクトな大学だが、どんな教育を行おうとしているのか、有信睦弘学長に聞いた。【中根正義】

 ――公立大でありながら、設置自治体の名前を冠していません。学部名も珍しい名称です。どんな大学なのでしょうか。

 叡啓大の「叡」は深い知性、「啓」は啓(ひら)くということを意味します。新たな知性を啓くとともに、獲得した知性によって新たな社会を拓(ひら)く、イノベーションを起こすことができる人材を育てたいと考えています。

 現代社会では、AI(人工知能)をはじめとする情報通信技術の発展が急速に進んでいる一方、気候変動や甚大な自然災害は科学技術の発展による地球温暖化が遠因とされ、自然や人間社会と調和する、持続可能な科学技術の開発が望まれるようになってきました。

 さまざまな問題が錯綜(さくそう)し、先行きの読めない不透明な社会のなかで、本学では、たくましく生き抜くために必要な資質やスキル、それを社会のさまざまな場面や領域で生かせる力として五つの「コンピテンシー」(資質・能力)を設定しました。「先見性」「戦略性」「グローバル・コラボレーション力」「実行力」「自己研鑽(けんさん)力」です。これらを卒業までに獲得することを目指し、新しい社会を先導する人材を育てようと、ソーシャルシステムデザイン学部と命名しました。

 ――これからの教育では、解のない問題の解決に取り組むことができ、自ら課題を発見し、地域や社会に貢献する人材の育成が急務だとされています。

 従来の大学教育は、学問を深く掘り下げ、その知識によって社会に貢献することを目指していました。しかし、定められた答えを素早く導くための知識や技術だけを磨いても、確たる解のない現代社会で、新しいことにチャレンジしようとしても難しいでしょう。私たちは、そのような先行き不透明な社会のなかで自ら課題を発見し、社会のためになる解決策を立案して実行できる人材を育成しようと考えています。新たな価値を創造し、イノベーションを起こせる人材の育成を目指しているのです。

 ――そのために、年内に行われる総合型選抜や学校推薦型選抜だけでなく、年明けの一般選抜でも独自の入試を実施するそうですね。

 現代社会が抱える問題は複雑な要素が絡み合い、その解決策を探るためには、文系・理系の枠を超えた総合的なアプローチが必要ではないでしょうか。しかしながら、日本の高校では早い段階から「文理分け」が行われ、以後、文系の生徒は数学や物理、化学などを、理系の生徒は国語や地歴、公民などを学ばないまま卒業し、大学に進学しています。

 しかし、国の中央教育審議会答申にもあるように、数学は国語や英語と並ぶ言語活動と位置づけられ、従来のような公式を覚えて正解を出すという活動では不十分だとされています。数学を理系科目とする発想そのものが間違いだという声もあるほどです。

 そうした観点から、本学は文理という枠で選抜はしません。知識や技能だけでなく、探究心やコミュニケーション力、課外活動に対する姿勢などを多面的・総合的に評価します。出願要件として、語学力の国際指標であるCEFR(セファール)でB1以上の英語力を求め、1次選考は大学入学共通テストの成績と、出願時に提出する書類(志望理由書、小論文、調査書)とを総合的に評価します。2次選考はオンラインによる面接です。独自日程のため、他の国公立大の前期・中期・後期日程との併願も可能です。

グローバル・コラボレーション力を高めるために英語教育とリベラルアーツ教育に注力

 ――入学後のカリキュラムもグローバル・コラボレーション力を高めるための英語教育と、文系・理系の枠を超え、真の「教養力」を身につけるためのリベラルアーツ教育を重視しているそうですね。

 入学時に一定の語学力を求めるため、入試でCEFRによる基準を設けています。そして、入学時からの半年間で徹底的に英語のコミュニケーション能力を鍛えるため、「Intensive English Program(英語集中プログラム)」を実施し、1年次3学期には英語で授業を受けられるレベルの英語力到達を目標としています。このプログラムは、かなり厳しい授業にもかかわらず、学生たちは好奇心を持って取り組んでいます。教科書的でない、極めて実践的な授業スタイルが奏功しているのではないでしょうか。

アクティブラーニング形式の授業が行われている叡啓大=広島市中区幟町で2021年10月21日、中根正義撮影 拡大
アクティブラーニング形式の授業が行われている叡啓大=広島市中区幟町で2021年10月21日、中根正義撮影

 リベラルアーツ科目は、SDGs(持続可能な開発目標)を意識し、SDGsの17のゴールについて、国連が分類した五つのP、「Peace(平和)、Partnership(共創)、People(人間)、Prosperity(繁栄)、Planet(地球)」を軸にして設定しています。これまでの大学教育の枠にとどまらないカリキュラムとして、前述した社会で生き抜くための五つのコンピテンシーのベースとなるICTやデータサイエンス、ロジカルシンキング、クリティカルシンキングなどを身につける科目を基本的なツール科目として、全員が履修します。

――叡啓大学では、すべての授業科目で、ディスカッションやディベートなどにより学生の積極的な参加を促すアクティブラーニングを採り入れています。

 本学の教育カリキュラムのもう一つの大きな特色として、自ら課題を発見し、実習やフィールドワークなどの体験を通して課題解決力や他者との協働力、リーダーシップなどを養う「課題解決演習(PBL)」があります。1年次の「課題解決入門」で課題発見・解決に必要な知識やスキルを身につけます。2、3年次では企業などから提供された課題について探究し、解決策の提案までを行う演習に取り組み、4年次の卒業プロジェクトにつなげていきます。

地元企業とも連携しPBL型学習を推進

 ――広島県は西日本を代表する一大ものづくり地域です。PBLを展開するためのプラットフォームづくりにも力を入れているそうですね。

 地元企業に向けてPBLの趣旨や内容を紹介する説明会を開催し、複数の企業や公的機関から前向きな回答をいただいています。グローバル化が進むなか、中小企業を含む多くの企業が、さまざまな経営的課題を抱えています。そうした生きた課題に、学生たちが身につけた知識とスキルで取り組む場として、このプラットフォームを生かしていきたい。

 学生たちの自由な発想が、思わぬ解決策を生み出すかもしれません。学生の提案が企業や公的機関の課題解決につながり、学生は成長し、大学も評価が高まるというウィンウィンの関係を築きたい。そして、大学卒業後もさまざまな形で地域に貢献していってほしいと願っています。

広島市の中心部にある叡啓大=広島市中区幟町 拡大
広島市の中心部にある叡啓大=広島市中区幟町

 地域に根差し、グローバルに突き抜ける人材育成を行うことで、社会を前向きに変えることができるチェンジメーカーを育てたい。それが私たちに課せられた使命だと考えています。

キャンパス

 広島市中区幟町1の5

学部

 ソーシャルシステムデザイン学部

ホームページ

 https://www.eikei.ac.jp/

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