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安倍晋三、菅義偉両政権では、「政治とカネ」の問題など不祥事が相次いだ。多くの疑問が残ったままだが、岸田文雄首相は真相の解明に消極的だ。
国民の不信は根強い。それが象徴的に表れたのが、衆院選の小選挙区で自民党幹事長の甘利明氏が敗北したことだ。
都市再生機構(UR)を巡る金銭授受問題について、甘利氏は説得力のある説明をしてこなかった。幹事長就任後に改めて追及されても、「説明責任は果たした」と繰り返すばかりだった。
甘利氏を要職に起用した首相の責任は免れない。
選挙買収で有罪が確定した河井案里元参院議員の陣営に、自民党から1億5000万円が提供された問題も残っている。
党は9月、河井元議員や夫の克行元法相の側が作成した資料をもとに、買収には使われていないとの見解を示した。
しかし、当事者の一方的な説明だけでは、国民の納得は得られない。同じ広島選挙区の自民党候補の10倍に上る資金が渡った経緯も分かっていない。
「桜を見る会」前夜祭の問題も疑問が解消されていない。不足した費用を補塡(ほてん)したことについて、安倍氏は、公職選挙法が禁じた有権者への寄付には当たらないと主張している。
だが、証明する書類を示さないなど、不自然な点が多い。市民から選ばれた検察審査会も「不起訴不当」の議決を出している。
森友学園を巡る公文書改ざん問題では、自殺した財務省職員の遺族らが再調査を要求している。与党内にも、さらなる調査・説明を求める意見がある。国有地が異例の安値で売却された経緯も明確になっていない。
首相は衆院選後の記者会見で「必要であるならば、政治の立場から説明していくことは大事だ」と述べ、人ごとのようだった。
これでは、国民の政治不信は払拭(ふっしょく)されない。特定の人たちの利益を図ったとすれば、政治の公正さに疑念を持たれかねない。
長期政権のおごりと緩みが生んだ疑惑について、調査を徹底し、説明責任を果たす。それが、衆院選で引き続き政権を担うことになった首相の責務だ。