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1923年、関東大震災により壊滅状態に陥った首都の混乱に乗じ、陸軍が不穏な動きを見せる。本栖湖の霧の奥処(おくか)にそびえる城に密使を送り、「不死鳥計画」の発動を画策し始めたのだ。それを知った竹取の翁(おきな)は、17年前に命を助けた、親譲りの無鉄砲な元数学教師の前に再び姿を現した……。
奇想天外。真藤順丈『ものがたりの賊(やから)』(文芸春秋)はまさにその一言に尽きるだろう。古今の日本文学に登場するキャラクターや、歴史上の実在の人物が、主役脇役カメオ出演を問わず、続々と登場するのであるから。
日本最古の物語である『竹取物語』の翁から「血の恩寵(おんちょう)」を受け、不老と不死に近い身体を得たのが、坊っちゃん、伊豆の踊子、光源氏、机龍之助、高野聖、虎と化した李徴たちだ。彼らは、死に至る感染症の息をまき散らしながら帝都に向け死の行進を続ける纐纈(こうけつ)城(じょう)の主(あるじ)(国枝史郎『神州纐纈城』)や、当時の著名なアナキストに憑依(ひょうい)した者と、壮絶な戦いに挑むことに。
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