特集

Listening

話題のニュースを取り上げた寄稿やインタビュー記事、社説をもとに、読者のみなさんの意見・考えをお寄せください。

特集一覧

社説

福島復興と東電の責任 原発依存では果たせない

  • コメント
  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 福島第1原発事故を起こした東京電力の経営が行き詰まっている。電力小売り自由化に伴う顧客離れに加え、収益拡大の柱と期待してきた新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働が全く見通せないためだ。

 東電は事故の賠償や廃炉費用などで16兆円を負担することになっている。だが、燃料高の影響も重なり、来年3月期は9年ぶりの最終赤字に陥る見通しという。

 このままでは最大の使命とする「福島復興への責任」を果たせなくなる恐れがある。再建策の抜本的な見直しが必須だ。

 問題は柏崎刈羽の再稼働を再建の頼みとしていることだ。「史上最悪レベルの事故を起こした東電に原発を動かす資格があるのか」と疑問視されてきた。

 さらに、柏崎刈羽を巡っては、他人のIDカードを使った不正入室や、侵入検知機器の故障などテロ対策の重大な不備が、今年になって相次ぎ発覚した。原子力規制委員会は審査を終えた7号機の再稼働を事実上禁じた。

 東電は9月、この不祥事の原因や再発防止策をまとめた報告書を公表した。経費削減を優先するあまり、侵入検知機器の故障が長期間放置されるなど、安全軽視の体質が浮き彫りになった。警鐘を鳴らす現場の声も経営陣に届いていなかったという。

 小早川智明社長は記者会見で「安全最優先の体制を作り、地元の理解や信頼を得る前提で再稼働を目指していく」と語った。1基を動かせば年間約500億円の収益改善効果が見込めるためだ。

 だが、地元の不信感は極まっており、再稼働への同意を得るのは難しい。「絵に描いた餅」の再建策では苦境を深め、社員の士気を低下させるばかりだ。

 東電は再生可能エネルギーの中でも安定した電源とされる水力発電所を多く保有する。大規模な風力発電所の開発も進めている。中部電力との合弁会社ではアンモニア燃料を使った火力発電の脱炭素化に取り組んでいる。

 こうした強みを生かせば、原発に依存しない新たな再建策を描けるはずだ。

 原発事故から10年。脱炭素時代をリードするような企業に生まれ変わらない限り、福島復興の責任は果たせないと自覚すべきだ。

コメント

※ 投稿は利用規約に同意したものとみなします。

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集