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国会を問う

国会審議の場などで起きていることを調査した。「言論の府」と呼ばれる国会のあり方を改めて考えたい。

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「ブラック霞が関」の背景に事前審査 実態知る元官僚の改革案は

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国会議事堂=東京都千代田区で2021年10月14日午前10時58分、西夏生撮影
国会議事堂=東京都千代田区で2021年10月14日午前10時58分、西夏生撮影

 国会の開催には後ろ向きで、審議を開いても議員たちはスマホいじり……。そのように国会が軽んじられる背景の一つに、自民党の「事前審査」の存在があるとされる。党内会議で内閣提出法案などを審査する半世紀以上続く慣習で、この場で与党議員と官僚の間で実質的な調整が済んでしまい、国会が退屈なセレモニーになっているからだ。著書「ブラック霞が関」で官僚の過重労働の実態を明かした元厚生労働官僚の千正康裕さん(46)は、事前審査が「ブラック化」の根本原因の一つだとして改革の必要性を唱えている。その真意とは。千正さんへのインタビューを前後編で掲載する(後編は11月12日に掲載)。【聞き手・大場弘行】

 ――著書のなかで「官僚の労力を最も割かれるのが国会対応だ」と述べています。自民党の事前審査とどう関係しているのですか。

 ◆官僚は国会の答弁書づくりのために深夜残業や休日対応を強いられるのです。これは質問の事前通告が審議直前まで来ないためです。この背景には二つの問題があります。一つは「遅れてもよい」というような議員の意識の問題です。この点は今年1月に国会内で話し合いがもたれたため改善が期待されますが、より根深いのは二つ目の問題です。国会の審議日程が直前まで決まらないことです。急に決まると、議員も質問の準備を慌ててすることになる。質問を精査する時間もとれない。役所への質問通告も遅れます。日程が直前まで決まらないのは、日程が与野党の駆け引きに使われてしまっているからです。この「日程闘争」の根っこにあるのが、実は与党の事前審査なのです。

 ――「根っこにある」とはどういうことですか。

 ◆事前審査では、法案などの政府の重要政策が論じられます。そこで党の所属議員の意見を取り入れ、全会一致の了承を得て国会に提出されます。党として了承した法案には党議拘束がかかる。所属議員は国会での賛成が義務づけられます。与党は多数を占めるので、法案は内閣が国会に提出した時点で可決されることがほぼ確定する。本来なら国会で幅広い意見を交えて法案を仕上げるべきですが、野党がどんなに反対しても修正されることはほとんどありません。ただし、日本の国会には決められた会期中に成立しなかった法案は廃案になるというルールがあります。だから野党はいろいろな理由をつけて与党の思い描く審議日程に応じず、時間切れに持ち込む戦略をとることになる。逆にいうと、野党の対抗手段は日程闘争しかないのです。

 ――与野党が日程調整をギリギリまでやるから委員会開催決定が遅れ、その後の質問通告も遅れる。そして官僚が深夜残業や休日対応を強いられるという構図ですか?

 ◆そうです。国会の会期は150日の通常国会に加えて臨時国会などもある。その間、過酷な勤務が続きます。しかも、いつ深夜残業が発生するか分からないから、平日の夜に予定を入れることもできない。霞が関のブラック化の裏にはこうした国会の事情があるのです。国会は社会常識とかけ離れた時間感覚で運営されています。それを変えないと、仕事と子育ての両立はむずかしい。それは質問を用意する側の議員や秘書も同じです。日本に女性議員がなかなか増えない要因でもあると思います。

 ――事前審査は1960年代に始まった慣習で、地方や産業界、省庁の意見を代弁する議員も参加します。利益誘導型の族議員がはびこる原因と批判もされますが、さまざまな声を政策に反映させるうえで合理的なシステムとも言われてきました。問題があるのですか。

 ◆だんだん時代に合わなくなってきていると感じます。法案や政策はいろいろな立場や利害関係のある人たちの意見を集約しながら作ります。かつては省庁が関係団体の代表や専門家に審議会で議論してもらったうえで自民党に法案をもって行くと、すんなり通ることが多かった。審議会が自…

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