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第2次岸田内閣が発足 自立と実行力が問われる

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 第2次岸田文雄内閣がきのう発足した。

 内外に課題が山積している。この難局にあって、どう国のかじ取りに当たるのか。衆院選で「国民の信任を得た」と言う首相に、重い責任が課せられた。

 格差拡大などの問題が、新型コロナウイルス禍で浮き彫りになった。米中対立が続くなど国際情勢も激動している。

 第2次安倍晋三政権以降の9年間、異論に耳を貸さず数の力で押し切る国会運営が目立った。議会制民主主義がゆがめられた。

 安倍氏のくびきから脱却し、自身が思い描く新しい国の姿をどう実現するのか。首相の実行力が問われる。

 新内閣で注目されるのは、外相に岸田派(宏池会)座長を務める林芳正氏を起用したことだ。

 超党派の日中友好議員連盟会長を務め、「(中国におもねる)媚中(びちゅう)ではいけないが、知中派であってもいい」と公言している。

ハト派外相どう生かす

 中国との向き合い方を巡っては、自民党内で対抗姿勢を前面に押し出す保守派と、対話を重視するハト派の路線対立がくすぶる。

 宏池会は日中国交正常化交渉を外相として担った大平正芳元首相が領袖(りょうしゅう)を務めた。

 安倍氏ら保守派の反発が予想される中での林氏の起用だ。首相主導の政権運営を目指す「自立」への一歩となるかが焦点だ。

 首相は日米同盟を軸に中国に対抗しつつ、対話も模索する現実路線を目指す。ハト派の外相をどう生かすか手腕が試される。

 新設した人権問題担当の首相補佐官への中谷元氏の起用にも、首相の意向が色濃く反映されている。防衛相を務めたベテランで、同じ宏池会の流れをくむ。

 中国による新疆ウイグル自治区での人権弾圧などを念頭に、情報収集や政府対応を統括する職責を担う。首相は信頼が厚い中谷氏を充て、柔軟に対応する余地を残したといえる。

 内政でも多くの問題を抱えている。首相は、どのような社会を目指すのかを明確にしたうえで、政策の優先順位を打ち出すべきだ。

 党総裁選では、新自由主義から転換し「分配」を重視する姿勢を訴えていた。ところが、肝煎りで始まった政府の「新しい資本主義実現会議」は、軸足が「成長」に移ったように見える。

 他にも複数の有識者会議を設置したが、安倍政権時代の主要メンバーが起用される例が目立つ。これではアベノミクスを継承するだけで、首相が目指すべき方向性が見えない。

 かつて大平内閣は「田園都市国家構想」「環太平洋連帯」など複数の政策研究グループを新設した。文化人類学者の梅棹忠夫氏や劇作家の山崎正和氏らを起用して長期的な課題を議論し、新しいビジョンを提示した。

 「新しい資本主義」という看板を掲げるのなら、スケールの大きな構想を練り上げるための体制を整える必要がある。

憲法改正は熟議が必要

 安倍政権以降、政策決定のあり方は様変わりした。官邸主導によるトップダウンが強まり、党の多様な意見を吸い上げる機会が少なくなった。

 岸田内閣の本格始動を機に、退陣から1年を経た安倍氏が細田派に復帰し、会長に就任する。最大派閥のトップとして、政権に対する影響力を強める可能性がある。

 首相は「聞く力」をアピールしている。政府よりも党の力が強くなる「党高政低」への変化も指摘される中、誰の意見を聞いて、どのような決断をするのか。首相には指導力が求められる。

 憲法改正問題とどう向き合うかも問われそうだ。

 衆院選で躍進した日本維新の会は、来年夏の参院選と同時に改憲の国民投票を実施すべきだと主張している。安倍氏が目指した早期の改憲を後押しする形だ。

 だが、総選挙で改憲は主要な論点にならなかった。日程ありきの進め方は乱暴だ。

 首相はもともと慎重な姿勢だったはずだ。国の最高法規である憲法のあり方や改正の是非については、幅広い国民的な議論を含めて熟議が欠かせない。拙速な対応は避けなければならない。

 首相は「信頼と共感に基づいて丁寧で寛容な政治を進める」ことを政治信条に掲げる。一国のリーダーとなった今こそ、その理念を有言実行する時である。

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