「忘己利他」晩年も精力的に活動 老若男女に慕われた瀬戸内寂聴さん

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新作長編小説「いのち」について語る瀬戸内寂聴さん=京都市の寂庵で2017年11月29日、小松雄介撮影
新作長編小説「いのち」について語る瀬戸内寂聴さん=京都市の寂庵で2017年11月29日、小松雄介撮影

 「死ぬ前の3年くらいは絵を描いたり、仏さまを彫ったりしてゆっくり暮らしたいわね」というのが、口癖だった。けれどその後ですぐに、「でも、いつが死ぬ時だっていうのよねえ」とカラカラと笑ったのは2008年のこと。

 そんな冗談が出るほど、瀬戸内寂聴さんの毎日は多忙を極めた。東日本大震災が起きる直前の10年11月、背骨を圧迫骨折して療養に入るが、それまでは1週間のうちに京都から金沢を経て沖縄に向かい、さらに東京を経由して青空説法のために岩手県の天台寺へというような日程をこなしていた。耳が遠くなり、目を患いながら講演、インタビュー、法話。その合間を縫って小説、随筆を書いた。80歳代の仕事量ではない。「私、殺されそう」と悲鳴を上げたことも。

 得度して人気に火がついた。1000人単位の講演会場を埋められる作家はそう何人もいない。瀬戸内さんはそれができる数少ない一人だった。講演の後半はいつも人生相談になった。家庭問題や病気、恋愛関係で悩む人々に明快な答えを与えた。天台宗の根本精神は「忘己利他(己を忘れて他に尽くす)」だという。外を歩く時は法衣だから目立つ。どこでも声をかけられた。一瞬のうちに相手を思いやり人々の心を落ち着かせるその姿は、…

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