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藻谷浩介・評 『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』=伊藤俊一・著

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『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』
『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』

 (中公新書・990円)

日本の今後を占う温故知新の妙

 「古代や中世の農民は、本当に朝廷や荘園主に年貢を納めていたのか?」というのは、評者の長年の疑問だった。

 「これからは公地公民制なので、朝廷に租庸調(そようちょう)を納めよ」という話になったのが7世紀。新規開墾地の私有が認められて、全国に荘園が増え、所有者たる都の貴族や寺社に上納を始めたのが8世紀。しかしそんな仕組みが、まさか15世紀の室町時代半ばまで続くとは。東寺の荘園だった新見荘(にいみのしょう)(岡山県)に至っては、室町幕府滅亡翌年の1574年に、特産の和紙を上納した記録があるという。その裏には、いかなる事情と力学があったのか。

 掲題書を通読してようやく、日本史の根幹を成してきた農地開発と税制度について、通時的な理解を得ることができた(ように思う)。

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