ミカン味でも名前はアップル? ネット通販お断りのジュースの謎
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「アップル」が人気だ。スマートフォンの新作が出るたびに話題となるあの巨大企業ではない。日本の下町の中小企業が製造している瓶ジュースのことだ。ミカン風味なのに名前がアップル、全国からの注文を断って地元でしか売らないご当地主義……。そんな謎めいたドリンクの原点を探ると、「サステナブル」(持続可能)という経営哲学が見えてきた。
製造元は従業員3人
アップルは見た目が黄色。飲むと甘さは控えめで、ほんのりと酸味がある。味はミカンジュースに近い。瓶や蓋(ふた)に商品名が記されていないのも特徴だ。1本150円前後。販売地域は神戸市長田区と兵庫区の一帯。駄菓子屋やお好み焼き屋、酒屋、銭湯など約150カ所で買うことができる。
造っているのは1952年創業の清涼飲料メーカー「兵庫鉱泉所」(長田区)。創業者である秋田政明さん(享年72)の後を継いだ息子の健次さん(64)が従業員3人とやっている工場だ。アップルの歴史は会社より古く、遅くとも終戦から間もない50年ごろには製造していたという。
原料は砂糖や香料で、リンゴは使われていない。なぜアップルと呼ばれているのか。「ハイカラな神戸に合った英語名を考えたから」「原料の酸味料にリンゴ酸が含まれているから」などと諸説ある。健次さんに尋ねると、「それがよう分からんのですわ」という答えが返ってきた。生まれた時からアップルは当たり前に存在し、96年に亡くなった父親に由来を聞いたことはない。誰が名付けたのかも不明だという。
「飲みたいなら神戸に来て」
そんな不可思議な名称もあって、7~8年前から「神戸のソウルドリンク」とメディアに取り上げられるようになった。すると、健次さんの元に「祭りで販売したい」「ネットで売ってほしい」といった注文が東京や大阪から寄せられ…
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