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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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「ロウソクの科学」で知られる英国の科学者…

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 「ロウソクの科学」で知られる英国の科学者、ファラデーは19世紀半ば、ロンドン・テムズ川の汚染状況を調べて「本物の下水道と同じ」と結論づけた。大英帝国の最盛期。人口が急増したロンドンはスラム街が広がるなど住環境が悪化した▲19世紀末に過密対策として提唱されたのが「ガーデンシティー構想」である。都市と農村の利点を併せ持つ計画都市の建設が試みられ、日米などの都市開発にも影響を与えた▲内務省は「田園都市」と訳し、全容を紹介した本を出版した。1918年に田園都市株式会社を設立したのが渋沢栄一(しぶさわ・えいいち)だった。事業は東京の田園調布など鉄道沿線の宅地開発につながり、戦後にも引き継がれた▲日本列島改造論の乱開発ブーム後、政権構想に掲げたのが大平正芳(おおひら・まさよし)内閣(78~80年)である。「都市に田園のゆとりを、田園に都市の活力を」と江戸時代の藩の数に相当する田園都市圏構築を目指したが、大平の急死で頓挫した▲大平が率いた宏池会の流れをくむ岸田文雄(きしだ・ふみお)首相が「デジタル田園都市国家構想」を打ち出した。第5世代(5G)通信などデジタル基盤を全国に整備し、地方活性化につなげるという。コロナ禍でテレワークが普及し、地方移住の動きが出ていることも意識しているのだろう▲本来、職住接近が田園都市の理想だが、日本では大都市近郊のニュータウン開発にとどまり長時間通勤を生んだ歴史がある。「デジタル」がついても多くは期待しないが、せめて満員電車ぐらいは解消できないか。

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