法廷で問う「なぜ姉を死なせた?」 路上生活者襲撃1年 弟の思い

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大林三佐子さんの写真やクリスマスカードを手にする弟=埼玉県内で2021年10月29日午前10時20分、鈴木拓也撮影
大林三佐子さんの写真やクリスマスカードを手にする弟=埼玉県内で2021年10月29日午前10時20分、鈴木拓也撮影

 東京都渋谷区で大林三佐子さん(当時64歳)が頭を殴られて死亡した事件は16日で発生から1年を迎える。大林さんは非正規雇用の仕事を失い、路上生活を続けていたところ被害にあった。かつて劇団員として活動し、アナウンサーになる夢もあった大林さん。事件当時の所持金は8円で、親族の連絡先が書かれたメモ用紙も持っていたが、連絡した形跡はなかった。「なぜ助けを求めなかったの?」。弟(63)は姉に問いかける。

 2020年11月中旬、警視庁の捜査員が突然、埼玉県にある弟の自宅を訪ねてきた。「身元を確認してもらえないか」。捜査員と一緒に代々木署に向かう車の中で、「人違いであってくれ」と祈り続けた。

 だが、安置された遺体の顔を見てすぐに姉と分かった。約20年ぶりの対面だったが、やつれた様子はなく、「眠っているように安らかな顔だった」。姉がキャリーケースを傍らに置き、バス停のベンチに背中を丸めて座る写真も見せられた。身ぎれいにしているように見えたが、捜査員から路上生活をしていたと聞かされ、心底驚いた。

 銀行口座残高は1000円あまり。ウエストポーチに入っていた名刺大のメモ用紙にはびっしりと連絡先が書き込まれていた。契約が切れた携帯電話もあった。「ここまで追い込まれていたとは」。言葉を失った。

 2人は広島市で生まれた。1学年上の姉は明るく活発で、自立心が強い性格だった。市内にある中高一貫の私立女子校に通い、高校時代は友人を自宅に招いて悩みの相談に乗るなど、友達思いな一面もあった。

 同市内の女子短大に進学し、…

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