「命削ってまで働いてはだめ」パワハラで娘を失った母、涙の訴え

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職場でのパワハラなどが原因で亡くなった伊佐間綾奈さん=母の佳子さん提供
職場でのパワハラなどが原因で亡くなった伊佐間綾奈さん=母の佳子さん提供

 10月下旬、日本福祉大(愛知県美浜町)のオンライン授業で、学生約120人に語りかける女性の姿があった。2012年、職場でのいじめやパワーハラスメントで娘を失った伊佐間佳子さん(58)=名古屋市北区。原稿を持つ手は震え、涙ぐみながらもはっきりとした口調で思いを伝える。「自分の命を削ってまで働き続けてはだめ。命より大切なものはないんだから」

 伊佐間さんの長女、綾奈さんは高校卒業後の09年、名古屋市内の青果物仲卸会社に入社した。少し引っ込み思案なところもあるが、負けん気が強く、頑張り屋だった。裁判資料によると、11年秋ごろから、先輩の女性社員2人に威圧的な言葉で叱責(しっせき)されるなどの嫌がらせを繰り返し受けるようになった。

 心身ともに疲弊し、うつ状態だった綾奈さんは12年6月、自宅で先輩社員から電話連絡を受けた後、伊佐間さんに背を向け、声も出さずに泣いていたという。会社での嫌がらせの相談を受けていた伊佐間さんが「もう会社辞めてもいいから」と声をかけると、「大丈夫だよ」と笑顔を見せて自室に戻った。それから5~6時間後、綾奈さんは自宅マンションの上層階から飛び降り、命を絶った。

 伊佐間さん夫妻は14年、会社や先輩社員を相手取り損害賠償を求める民事訴訟を起こす。17年に名古屋高裁がパワハラと自殺の因果関係や会社の責任を認め、18年の最高裁で確定した。

 「娘のような被害者を二度と出したくない」。伊佐間さんは、社会に出る前の若者に働く意味を考えてもらおうと、17年ごろから過労死防止のための啓発授業などで高校や大学に出向く。19年に「過労死遺族会」の地区代表となり、各地で話をしてきた。

 日本福祉大のオンライン授業で、伊佐間さんは…

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