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産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える努力を追求する――。国連の気候変動枠組み条約の第26回締約国会議(COP26)が、そう明記した成果文書に合意し、閉幕した。
温暖化対策の国際枠組みである「パリ協定」よりも明確に「1・5度」を世界の共通目標として位置付けた意義は大きい。
温室効果ガスの排出量が多い石炭火力発電を段階的に減らしていくことも盛り込んだ。
これまで排出削減の方法は各国に任されてきたが、目標達成には「脱石炭」が欠かせないとの認識から踏み込んだ表現になった。対策が加速する効果が期待される。
合意にこぎつけた背景には、気候変動への危機感が排出大国でも高まっていることがある。
米国がバイデン新政権になり、パリ協定へ復帰した。COP26では、世界最大の排出国の中国とともに対策を強化していくと発表した。インドも初めて排出実質ゼロを目指すと表明した。
議長国の英国が果たした役割も大きい。森林の保護や、石炭火力の削減、電気自動車の拡大など個別の分野で、高い目標を掲げる国や企業による「有志連合」作りを主導した。目標引き上げの機運を高めた。
ただし、パリ協定は各国が自主的に目標を設定し、取り組むルールだ。実効性をどのように確保するかがカギを握る。
1・5度目標の達成には、対策を確実に進めるための行程表が重要だ。途上国は経済発展に伴い、今後の排出が増えることが見込まれる。先進国は率先して削減に取り組み、途上国への支援をさらに強化しなければならない。
日本は、エネルギーの安定供給のために火力発電が欠かせないとの立場だ。しかし、石炭に依存し続けていては、国際社会の理解を得られない。石炭火力を減らす道筋を示す責任がある。
ジョンソン英首相は「(目標の実現までは)まだ長い旅だが、残された時間は少ない」と述べた。
成果文書は、2030年までの削減目標について、各国に来年末までに再検討し、引き上げることも求めた。より高い目標を掲げ、足並みをそろえて各国が行動する時だ。