
「写真は撮ったもん勝ちの世界や」。若いころに誰かに教わったのか、私の心に今も残る大阪弁の言葉だ。
今年度の新聞協会賞に、私が写真撮影した「『ぬくもりは届く』~新型コロナ 防護服越しの再会~」が選ばれた。数々の運が重なって、あの場所でシャッターを切れたのだと改めて思う。受賞決定後、被写体の箕浦(みのうら)尚美さん(63)と再会した。昨年10月の取材後もやりとりしていたが、会うのは約1年ぶりだった。
「あの瞬間、撮影されていることも防護服を着ていることも、完全に忘れていました」。箕浦さんは笑顔で振り返る。だから、8カ月ぶりに再会して抱き寄せた母の中島万里子さん(90)の顔は、宇宙服のような防護服のビニールに埋もれてしまっている。
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