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死刑制度 議論の時 欧州廃止、米も衰退 世論は8割「容認」

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甲南大の笹倉香奈教授=神戸市東灘区で2021年11月4日、梅田麻衣子撮影
甲南大の笹倉香奈教授=神戸市東灘区で2021年11月4日、梅田麻衣子撮影

東京五輪開催 2年執行なし

 安倍晋三政権から岸田文雄政権に至る約2年にわたり、フタをされてきた論点がある。死刑の執行の問題だ。東京オリンピックという「平和の祭典」を開いた日本は、死刑を執行していない。いまや大半の先進国で廃止されている時代。「ガラパゴス化が浮き彫りになって、国際的な非難を浴びるのを避けたのでしょう」と、死刑制度に詳しい笹倉香奈・甲南大教授(43)は指摘する。

 「死刑を容認」が80・8%、「廃止すべきだ」は9・0%、「わからない」が10・2%。内閣府が2020年に発表した世論調査の結果だ。国民の大半は死刑の存置に肯定的な立場を示している。その割合は過去20年でほぼ変わらない。古川禎久法相も10月の就任会見で「重大な凶悪犯罪を犯せば死刑を科すこともやむを得ない。廃止は適当ではない」と述べている。

 一方で世界を見渡せば、死刑をやめる国が増えている。笹倉さんは「国による残虐な拷問だという認識が、民主主義国家で浸透しています。死刑は時代遅れになっているのです」と解説する。欧州では1980年代にフランスやオランダ、90年代に入るとベルギーや英国も死刑を全面的に廃止。欧州連合(EU)は死刑廃止を加盟条件としており、いまや制度の廃止が常識となった。00年以後も南米やアフリカなどで廃止国が増え、世界的に広がりを見せている。

 死刑の存置国でも、例えばロシアは執行を凍結、韓国も97年を最後に執行を停止している。アムネスティ・インターナショナルによると、廃止(事実上の廃止を含む)の144カ国に対し、存置は55カ国で、いわゆる開発途上国が中心だ。20年中に執行が確認された18カ国で執行件数の上位5カ国は中国、イラン、エジプト、イラク、サウジアラビアだった。

 「民主的な先進国で死刑が維持されているのは日本と米国の2カ国。両国とも際だって特殊な存在」としながらも、笹倉さんはこう指摘する。「でも米国でさえ死刑制度は衰退している」。どういうことなのか。

 米国ではトランプ政権が17年ぶりに死刑の執行を再開したが、死刑廃止を公約にしたバイデン氏が大統領に就任し、今年7月、連邦レベルでの死刑執行の一時停止を発表。米国では連邦政府、州政府それぞれが刑の執行をしており、最近では州レベルでも死刑の停止や廃止が相次ぐ。全50州中、廃止が23州、執行停止を宣言したのは3州。過去10年で執行がない10州と合わせると36州に上り、全体の7割を占めるという計算だ。

 死刑を巡る世界と日本とのギャップは、なぜ生じたのか。

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