正義って何? SNS暴力と「正論」の関係は? 巡る思考

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 ネット中傷や炎上の背景として、加害者側が「正義感」を挙げることは少なくない。後半の4回目を迎えた開成中の授業。これまでネットの特性、それを使う人間の側の問題を考えてきた生徒たちは、いよいよこの「正義」とは何か、という課題に向き合うことになる。時に黙り込む生徒たちに、神田邦彦先生(58)は呼びかけた。「いろいろ考えてみよう」。記者も一緒に思考を巡らせた(次回は29日掲載)。【宇多川はるか/デジタル報道センター】

「意味分かんねー」から考える

 「実名制にした方がいい」「手軽に書き込めることで被害も起こるけれど、手軽に書き込めるから意見も書けるわけで」「実名制にすると、プラスの方向まで失われる」……。10月6日の4回目の授業冒頭、生徒たちはSNSの匿名性について口々に言い合っていた。神田先生が前回までの授業で言っていた「手軽な加害と深刻な被害」というキーワードに、モヤモヤした思いを抱えているらしい。

 この日神田先生は、芸人のスマイリーキクチさんが、自身が巻き込まれたネット中傷事件を振り返る本「突然、僕は殺人犯にされた」を改めて取り上げた。一連の授業の課題図書だ。本では、スマイリーキクチさんが「凄惨(せいさん)な事件の加害者」だというデマを信じる「加害者」たちが、「許せない」という「正義感」からスマイリーキクチさんへの中傷を加速させる様子が描かれる。神田先生は本の内容を振り返りつつ、2回目の授業で伝えた最近の報道を再びスクリーンに映した。

 <木村花さんの母を侮辱疑い 40代男性書類送検 警視庁>

 <遺体で発見女子中学生の“いじめ調査”続く中…遺族へ相次ぐ誹謗中傷「発信者情報の開示」求め提訴>

 いずれも遺族にまで中傷が起きている現状を伝える記事だ。「この記事を紹介した時、『意味わかんねー』って声が上がったよね」。神田先生が2回目を振り返りながら言う。「『意味わかんねー』っていうのは、微妙な恐ろしさを抱えていると思う。そうしたら、あっちは意味分かるの? こっちは意味分からないの? 『意味分かる』のはどっち?となる」

 黙り込む生徒たち。私も思考を巡らせ、やっとたどり着いた。ああ、神田先生は、悲しむ遺族を攻撃…

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