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MVP受賞 二刀流生みの親・栗山英樹さんが語る「大谷翔平のすべて」

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インタビューに答えるプロ野球・日本ハム前監督の栗山英樹さん=東京都千代田区で2021年11月16日、小川昌宏撮影
インタビューに答えるプロ野球・日本ハム前監督の栗山英樹さん=東京都千代田区で2021年11月16日、小川昌宏撮影

 米大リーグでア・リーグ最優秀選手(MVP)を受賞したエンゼルスの大谷翔平選手(27)には、投打二刀流の「生みの親」がいる。古巣のプロ野球・日本ハムで今季まで監督を務めた栗山英樹さん(60)がいなければ、世界を熱狂させる「SHO―TIME」は生まれなかっただろう。ユニホームを脱いだ栗山さんが、二刀流誕生から今までの「翔平のすべて」を語った。

「もう翔平とは野球をやりたくない」

 大谷選手がMVPを獲得したという事実一つで、栗山さんの「千里眼」の証しとなるはずだ。だが、栗山さんは日本ハムで大谷選手と共にした5年間を誇らしげに語ろうとはしなかった。「もう、翔平とは二度と野球をやりたくない。僕がもし決断を間違えると、野球界の大切な宝を壊してしまうといつも思っていました。でも大事にしすぎると、みんなが驚くような成長は遂げられない。壊れないか、ただただ怖かった」

 メジャー4年目の今季、大谷選手は初めて投打で本格出場。「打者」として本塁打46本で100打点、26盗塁をマーク。「投手」としては9勝2敗と上々の成績を残した。「ベーブ・ルース以来」と言われる活躍に日米は沸いたが、大谷選手は今季の成績を「最低ライン」とだけ表現した。栗山さんも、ここが出発点と意識する。「大リーグに送り出す時、打者だけなら本塁打王、投手だけならサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)を取れると信じて送り出した。でも投打両方やってこの結果ですから、まだまだいけますよ。これからどう数字を伸ばすか計り知れないのに、今季の活躍ぐらいで『すごい』と褒められたら、僕は納得できない」

 1年目は右肘、2年目は左膝にメスを入れた。「二刀流」が彼の代名詞となるまで4年の歳月がかかった。15日に東京都内の日本記者クラブで記者会見した大谷選手は、けがとの闘いについて「不安はあったが、焦りはなかった」と語った。本音とは受け取りがたい発言だが、栗山さんはこれに共感したという。「もし投手しかしていなかったら、1年以上ゲームから離れることになる。でも、翔平は手術して間もなく打者として試合に出られた。それが投打の両方をやる意義で、間違いなく精神的に落ち着いたはずです」と推察する。

 今季、二刀流ながら本塁打王争いを演じる姿に日米が熱狂したが、栗山さんはあえて辛口だ。「口には出さなかったけど、誰よりも僕が翔平に取らせてあげたかった。異国の地でタイトルを取る難しさも、四球で勝負してくれない悔しさも分かります。それでも、最後の2カ月間でホームランにできる球が100球はあった。それを捉えられなかったのが現実で、さらに違うレベルの努力をすべきだということです」

 一方でシーズン後はタイトルの受賞ラッシュが続き、MVPにも輝いた。「お祝いなんてする必要があるの? 翔平にとっては終わったシーズンに対する評価に過ぎない。来季に向け、過去にとらわれている暇などありませんから」。世間の祝福ムードに思わず苦笑する。

 15日の記者会見。米より日本の方が二刀流の受け入れ幅が狭かった、と大谷選手は漏らした。入団当初、二刀流の挑戦に懐疑的な意見が目立ったことを思い返しての発言なのだろう。栗山さんは「あの言葉が一番、胸に刺さりました」と漏らす。栗山さんには「批判は想定内」と気丈にふるまっていた大谷選手の本音を初めて知った。一方で栗山さんにとってジムで体を鍛える当時の姿が印象深かった。「『トレーニングの目標は今じゃない』と言うんです。今の筋力では理想の動きができなくても、5年後にはできるようになる、ということでしょう。彼には見えないはずの未来のビジョンが描けていたのかもしれません」と述懐する。

「絶対に大化けする確信があった」

 日本ハムで指揮を執った10年を振り返ると、自分の監督退任より重い区切りがあった、と栗山さんは言った。それは大谷選手がエンゼル…

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