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感情ってなんだろう? ドイツ人歴史学者 ヤン・プランパーさん

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ドイツ人歴史学者のヤン・プランパーさん=本人提供
ドイツ人歴史学者のヤン・プランパーさん=本人提供

 以前読者の方から、こんなお褒めの言葉をいただいた。「多くの人は善悪で書くのに、あなたは好き嫌いが基準だからいい」。言われて納得した。理性より感情。何を書くべきかより、何が好きかが先。でも、感情や直感は長く軽んじられてきた。放射能汚染を嫌がる住民について専門家が「人間には感情があるから厄介だね」と小ばかにするような言い方をした。でも、本当は感情が一番大事なのでは? では、感情はどこから来るのか。アイルランドのリムリック大教授でドイツ人歴史学者、ヤン・プランパーさん(51)に聞いた。

 プランパーさんのことは2020年11月に翻訳本が出た著書「感情史の始まり」(みすず書房)で知った。人間の感情について、学者たちがどう掘り下げてきたかを書いた大著だ。悲しみ、嫉妬、喜び、恋愛といった感情は人類普遍のものか、文化など環境で左右されるのか、といった議論が詳しく書かれている。ジャンルとしても確立途上のせいか、感情の定義やその出所について結論があるわけではない。そこで著者にメールで取材を申し込んだ。「新型コロナウイルスに感染して入院中に読み、感銘を受けました」と書いたら、プランパーさんはすぐに「素晴らしい。あなたは私にとって初の、コロナ闘病中の読者です」と快諾してくれた。画面上で向き合い、まず聞いたのは感情の定義だ。

 「感情は人間の現象でも定義が最も難しいものの一つです。実際、1872年から1980年までの英語圏の実験心理学という1ジャンルだけを見ても、92もの定義があります。誰もが知っていながら、誰ひとり、それが何かと言い表せないものです。歴史学者が示せるのはその捉え方、意味が変化してきた過程です。感情とは体の現象なのか、心理の表れか認知か、刺激に対する反応か。そこに人の意思がどう働くのかなど捉え方は実にさまざまです」

 どうもすっきりしない。著書にあるさまざまな定義の中ではドイツの脳科学者、エルンスト・ペッペル氏(81)が言い当てている気がする。要約すると…

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