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ベラルーシ国境の混乱 「難民」を道具に使う非道

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 相手に圧力をかける外交手段として、移民の存在を使おうとするのであれば、到底許されない。

 中東から欧州連合(EU)への移住を目指す数千人が、ベラルーシ西部の国境地帯に殺到した問題である。

 ポーランド側に越境できずに森林で野宿生活を強いられた。厳しい寒さの中、食料もなく、死者も出ている。

 移住希望者の多くはイラク北部の少数民族クルド人だ。ベラルーシの国営旅行会社のツアーで渡航したとされる。ベラルーシ治安当局の手助けで鉄条網をくぐり、越境した人々もいる。

 EUは、ベラルーシが非正規移民を「難民」に仕立てる形で「圧力をかけようとしている」と非難した。ベラルーシのルカシェンコ大統領は関与を否定した上で、ポーランド当局による越境阻止について「(EUには)人権と自由があると思っていた」と、皮肉を込めて応じた。

 背景には、強権的なルカシェンコ政権と、これを批判するEUとの関係悪化がある。

 昨年の大統領選以降、EUはルカシェンコ氏と政府高官の資産を凍結するなどの制裁を科してきた。「不正な選挙」と主張する野党支持者らを政権が徹底的に弾圧したからだ。

 今年5月には、反体制派ジャーナリストが搭乗していた欧州の旅客機をベラルーシ当局が強制着陸させる事件もあり、EUは制裁を強化した。

 これを受け、ルカシェンコ氏は「我々は麻薬や移民(のEUへの流入)を阻止してきた。圧力をかけるのであれば、今後は自分たちで捕まえればいい」と警告した。ベラルーシ経由で中東から欧州に入ろうとする人が増え始めたのはこの後だ。

 喫緊の課題は、悲惨な状況に置かれた人々の安全確保だ。支援の食料は届き始めたが、落ち着く先は見えていない。双方は目先の対立を横に置き、人道危機の回避に全力を挙げなければならない。

 近年、EU諸国には、中東から流入する移民・難民が増加し、社会問題となってきた。欧州への移住を夢見る人々の弱みにつけ込むような非人道的外交をベラルーシは改めるべきだ。

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