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在外邦人の投票 ネット方式の本格検討を

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 選挙権の平等に照らし、看過できない事態である。

 先の衆院選で、海外に住む有権者への投票用紙の郵送が遅れたり、投票が間に合わなかったりするトラブルがあった。

 海外には100万を超す有権者がいる。投票には名簿登録が必要で、約10万人が登録している。選挙の際、在外公館に出向くか、郵便での投票が認められている。 

 衆院選の郵便投票の場合、登録者の請求に基づき、通常は各自治体が解散後に投票用紙を郵送する。これに記入し、返送する。

 ただし今回は、議員の任期が満了する60日前の8月下旬から投票用紙を送付する必要があった。これが一部の自治体に浸透せず、郵送が解散間際にずれこんだ。

 しかも解散から投票までが17日間と短いうえ、新型コロナウイルス下のため、国際郵便事情も悪かった。毎日新聞の調査によると、東京23区では請求者の4割近くが投票しなかった。多くは間に合わず、断念した可能性がある。1割近くは、返送した投票用紙が締め切りまでに届かなかった。

 送付が遅れた自治体は猛省すべきだ。だが、用紙請求から投票まで、1往復半の国際郵便のやりとりが必要な方式には無理がある。

 在外邦人は、最高裁判所裁判官の国民審査が投票できないという問題もある。「裁判官名を記した用紙の郵送が間に合わない」との理由からだが、東京高裁は昨年、違憲判断を下した。

 在外邦人の間には、インターネットによる投票を求める声が広がっている。総務省の研究会は既に、在外投票で実施を認める報告をまとめている。マイナンバーカードで本人確認する方法だ。

 ネット投票を巡っては国内での導入論議もあるが、セキュリティー対策を危ぶむ声が根強い。サイバー攻撃や、システムダウンなどへの懸念からだ。

 政府は自治体と連携しての実証実験などを進めている。失敗は許されないだけに、万全を期すべきなのは当然だ。

 導入するならば、必要性が高く、システムの負荷が小さい在外投票を優先するのが現実的だろう。政府内の検証作業を進めるとともに、政党レベルで議論を本格化させる必要がある。

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