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第49回衆院選

岸田文雄首相が衆院選を10月19日公示、31日投開票で実施すると表明。短期決戦の選挙戦となります。

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男女格差是正は付け足し? それでも衆院選で感じた変化

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衆院選中、市民の有志らが野党党首を招いた街頭演説会。性差別の是正を訴えるプラカードを持つ参加者もいた=東京都新宿区で2021年10月23日午後6時11分、菅野蘭撮影
衆院選中、市民の有志らが野党党首を招いた街頭演説会。性差別の是正を訴えるプラカードを持つ参加者もいた=東京都新宿区で2021年10月23日午後6時11分、菅野蘭撮影

 世界経済フォーラムが3月に発表した男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」で、日本は156カ国中120位。そんな男女格差“後進国”の日本で10月、衆院選(同31日投開票)が行われた。選択的夫婦別姓や同性婚の制度導入などジェンダー関連の政策が、争点として大きく取り上げられた初の国政選挙。ジェンダー平等に向け、政治は変化しているのか――。政権政党である自民党の9月の総裁選、野党第1党の立憲民主党で行われている代表選(11月30日投開票)も含め、両党を中心に取材しながら考えた。【菅野蘭/デジタル報道センター】

高まる注目度 与野党の対立軸に

 今回の衆院選で、ジェンダー政策への注目度を端的に示す数字がある。

 データベース会社「ジー・サーチ」の記事検索サービスで検索可能な、毎日新聞など全国紙4紙、通信社2社、NHKの7媒体の「衆院選」「ジェンダー」の言葉を含む記事を調べると、衆院選中の記事は前回2017年に比べ、5本から213本と約43倍に増加。「衆院選」「夫婦別姓」では、94本から265本と約3倍に増えていた。

 こうした報道の増加は、ジェンダー平等への国民的な意識の高まりを背景にしており、選択的夫婦別姓や同性婚の制度導入などが、立憲や共産など野党4党の共通政策に掲げられる一方で、自民党の公約には盛り込まれず、ジェンダー政策は与野党の対立軸の一つとなった。

選択的夫婦別姓を切望する女性

 衆院選中、私は東京都内で計13カ所の自民、立憲などの候補者演説会に足を運んだ。ジェンダー平等がどのように語られるかを知るためで、演説を聞いていた有権者に夫婦別姓などへの考えを尋ねた。その中で印象に残った女性がいた。

 恋人と都内で同居している会社員の女性(28)で、「自分のアイデンティティーである今の姓を優先して事実婚を選ぶか、子供を持つことも考えて法律婚を選ぶか、迷っています。彼にとっては大きな問題ではないようだけど、選択的夫婦別姓制度が早く認められるかどうかは、結婚を考えると年齢的にも私には差し迫った問題です」と打ち明けた。

 戦後に改正された民法は、婚姻に際して夫婦いずれかの姓を選択するよう義務付けた。夫が改姓してもいいが、夫婦の96%で妻が夫の姓に改姓している。会社員女性が言ったようにアイデンティティーが失われ、仕事の業績が周りに認識されにくくなるなど、改姓のリスクや負担は事実上女性が負わされる。この民法の規定については、国連の機関が「差別的」として何度も是正を勧告している。

 その会社員女性は他に、避妊の失敗や性暴力など望まぬ妊娠を防ぐ緊急避妊薬(アフターピル)について、市販薬にして入手しやすくすることなどにも言及した。「自分が年齢を重ねるにつれて、ジェンダーで気になることが増えました。でも自助努力で変えられるものって、そんなにないですよね」と、政治による変革に期待した。

各種世論調査と自民とのギャップ

 今回政権を維持した自民党は、ジェンダー政策に総じて後ろ向きだ。

 衆院選公示の前日に行われた10月18日の日本記者クラブ主催の党首討論会で、選択的夫婦別姓制度の法案提出について、岸田文雄首相(自民党総裁)は9党首の中で唯一、賛成の挙手をしなかった。安倍晋三元首相ら党内の保守強硬派に配慮したとみられる。

 毎日新聞が衆院選で実施した全候補アンケートのうち、当選者分の集計では、選択的夫婦別姓の制度導入に58%が賛成し、反対は21%どまり。しかし、自民党の慎重姿勢は突出し、反対した94人中87人は自民で、同党だけ反対が賛成を上回った。同じ傾向は、同性婚の制度導入への賛否でもみられた。

 各種世論調査では、夫婦別姓や同性婚の制度化について反対より賛成が多い。政権政党である自民党と、国民の意識とのギャップに、あぜんとする。

立憲・枝野氏に見た「社会像」

 一方、野党はどうだったか。野党第1党の立憲は、ジェンダー平等を公約に掲げていたが、本気度を疑わせることがあった。

 印象に残ったのは選挙中の10月23日、東京・池袋での街頭演説会。枝野幸男代表(当時)は、非正規で働くシングルマザーの「まともな暮らしをしたい」という悲鳴を紹介した上で、こう続けた。「日本はそんな貧しい国になってしまったのか」「希望すれば正社員で働ける。40年前には当たり前の社会でした」「1億総中流社会を取り戻そう」――。

 格差是正のための所得の再分配や、労働規制の緩和で非正規労働者を増やすことにつながった労働者派遣法の見直し、新自由主義的な経済政策からの脱却も主張し、そこは理解できた。しかし、1988年生まれでバブル崩壊後の経済低迷期以降に育った私としては、目指す社会像のキャッチフレーズとして、高度経済成長期の70年代の「1億総中流社会」の復活などと持ち出されても、ぴんと来なかった。

 40年前と言えば、86年の男女雇用機会均等法の施行前で、女性の雇用機会や待遇は著しく不平等だった。「1億総中流」は「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業の家族モデルで支えられていた社会だ。しかも、厚生労働省の調査によると、シングルマザーが大半を占める、大人1人で子供を育てる世帯の貧困率は、バブル景気中の88年でも5割を超えていた。

 当時の社会構造や、今も変わらない男女格差には触れず、過去をノスタルジックに美化されても共感しづらかった。同世代の男女数人にも聞いたが、「中高年の男性目線の社会像」「昔は良かったと言われても、生まれた時代が良かっただけに思えてしまう」という反応だった。

本気度を疑わせた立憲幹部らの演説

 私は選挙中、枝野氏が参加した立憲の街頭演説を4回聞いた。しかし、マイクを握った枝野氏ら男性の幹部や候補は総じて、夫婦別姓や同性婚に少し言及するものの、「ジェンダー平等」「男女格差」という言葉を正面から使わず、これにも違和感を覚えた。

 今回当選した立憲の中堅議員に聞くと、「社会の多様性を重視する『リベラル』を旗印にした政党だから、表向きはジェンダー平等を掲げている人もいるが、実際は『女性の問題は、女性議員が語るもの』と思い込み、…

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【第49回衆院選】

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