がん支援、受けられないのは「運が悪いから」自治体が驚きの弁明

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売れ行きが好調な医療用かつら=大阪市北区の「プリシラ」梅田サロンで2021年10月21日午後2時48分、中田敦子撮影
売れ行きが好調な医療用かつら=大阪市北区の「プリシラ」梅田サロンで2021年10月21日午後2時48分、中田敦子撮影

 引っ越せということなのか。抗がん剤治療の副作用で髪が抜けるなどして外見が変わった人のため、医療用かつら(ウイッグ)などの購入費をサポートする自治体がある。ところが、住んでいる場所によって利用できる、できないが変わってくるケースもある。担当者に聞くと「運が悪かったと思って」と驚くべき答えが返ってきた。そんな不公平な制度の仕組みとは――。【中田敦子】

絶望感から抜け出すウイッグ

 児童文学作家の安田夏菜(かな)さん(60)は2008年9月、47歳で乳がんのステージ2と診断された。手術を経て、抗がん剤治療が始まる。その2週間後、髪の毛やまつげが抜け始めた。薬の副作用だ。09年1月には髪の毛が全て抜け、鏡に映った自分を見て「もう女ではなくなってしまったんだ」と落ち込んだ。それでも、約20万円で購入したウイッグを着けて生活し、医師から「すごく自然でいいね」と言われたことに救われた。容姿が変わってしまった絶望感から少しだけ解放された瞬間だった。

 抗がん剤治療で毛が抜け落ちたり、手術で乳房を切除したりした患者の負担を減らそうと、安田さんが住む兵庫県は4月から「アピアランス(外見)サポート事業」を始めた。ウイッグや人工乳房のほか、乳房を保護する補整下着の購入費を最大5万円補助する制度だ。がんになっても生き生きと社会で活躍できるように患者を支えるのが狙いで、県のがん対策の目玉でもある。21年度予算に1500万円を計上した。

 安田さん自身は抗がん剤治療を既に終え、地毛も再び生えたためウイッグは使っていない。地元の取り組みを「がん患者にはありがたいですね。でも……」と口を濁す。制度の対象者は全県民となっていたが、実際に始まってみると、県内の全41市町のうち3割にあたる13市町に住んでいると補助を受けられないことが判明した。なぜか。担当する県疾病対策課に記者が尋ねた。すると、こう言われた。

 「お住まいの市町に制度がないとどうにもならない。運が悪かったと思ってもらうしかないですね」

背景に県と市町の役割…

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