「神話感ゼロ」の育児エッセー 松田青子さん新刊「自分で名付ける」
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2016年刊行の短編集「おばちゃんたちのいるところ」の英訳版が21年11月、世界幻想文学大賞の短編集部門に選ばれた作家の松田青子さん(42)。そのジェンダー批評の目は、小説のみならずエッセーでも鋭い。新刊の育児本「自分で名付ける」(集英社)は、家父長制社会が敷く「普通」の一つ一つに突っ込みを入れながら、無数の気づきを怒りと笑いの言葉でくるむ。
妊娠に出産、そして“母性”。いずれも神秘的に語られがちなことに「もともと違和感があった」と松田さんは言う。19年に子を産み、積もり積もったその違和感を、いわく「神話感ゼロ」の本書に並べた。
現在はパートナーや実母とともに子育てする。結婚はしていない。<結婚すると女性側がそれまでの名前の半分を失うのを当たり前のことにしてきた>社会への違和感があり、自身にとっては「普通」の選択だった。「印象的だったのは、結婚している友人たち数人が『わかる、私もそうしたかった』と言ったことです」。この国の「普通」はずっとずれたままだ。
現に、今や世論も過半数が賛成している選択的夫婦別姓について、政府の議論は遅々として進まない。「日本は家父長制がいまだ根強く、社会の中で生きづらい人や生活に支障をきたしている人がたくさんいるのに、いまだ『日本の伝統』というファンタジーに現実の人たちを閉じ込めようとしています」と松田さん。そんな不条理をはじめ、無痛分娩(ぶんべん)のありがたみから子守歌を巡る持論まで「できるだけ…
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