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ソ連崩壊30年

東西冷戦で米国と覇権を競ったソ連は1991年12月に崩壊。連邦解体から30年の足取りや現状をリポートします。

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ソ連崩壊30年

「ソ連が最良の時代」7割超 ロシア国民の中で薄れる負の記憶

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人権団体「メモリアル」の解散を求める訴訟が行われているロシア最高裁の前で「メモリアルを禁止しないで」と書かれたマスクをつけて連帯を表明する支援者=モスクワで2021年11月25日、前谷宏撮影
人権団体「メモリアル」の解散を求める訴訟が行われているロシア最高裁の前で「メモリアルを禁止しないで」と書かれたマスクをつけて連帯を表明する支援者=モスクワで2021年11月25日、前谷宏撮影

 ソ連が1991年12月に崩壊してから、まもなく30年を迎える。旧ソ連諸国の今を取り上げた連載(全7回予定)の第5回はソ連懐古の風潮が強まるロシアの状況を報告する。次回はロシアで強まるメディア規制を取り上げる。

 ソ連末期にグラスノスチ(情報公開)が始まると、共産党政権により長年隠されてきた独裁者スターリンによる大粛清などの負の歴史の解明が進むという期待が高まった。だが、ロシアでは今、抑圧の歴史への記憶は薄まり、ソ連時代を「最良の時代」と答える人は7割を超える。何が起こっているのか。

 「恥だ」「ファシスト」。10月14日夜、モスクワ中心部にあるロシアの人権団体「メモリアル」の事務所。スターリン体制下の30年代初期にウクライナで起こった大飢饉(ききん)「ホロドモール」に関する映画の上映会が始まると、約40人のマスク姿の男らが会場に侵入し、観客を罵倒し始めた。男らの後ろには政府系テレビ局のクルーまで同行し、一部始終を撮影していった。

仕組まれた侵入事件とその後の捜査

 事態はこれで終わらなかった。通報を受けて警察が駆けつけるまでに男らの多くは逃走。到着した警察はなぜか事務所の入り口を封鎖し、職員と観客を閉じ込め、事務所にあるパソコンや文書の提出を求めた。理由は不明だった。窓から入ってきた弁護士が捜査の違法性を訴え、ようやく警察が引き下がったのは夜中の3時だったという。

 11月初めに取材に応じたメモリアル執行理事のエレーナ・ジェムコワ氏(60)は「我々を狙って計画された(当局の)作戦。パソコンのデータなどから何らかの刑事事件を作り出す口実を見つけようとしたのだろう」と振り返り、「これで終わりとは思っていない」と話した。予想は的中した。それから10日ほどたち、裁判所からメモリアルの解散を求める検察当局の訴状が届いた。

 メモリアルはソ連末期の87年、ノーベル平和賞を受賞したソ連の反体制活動家サハロフ博士らが中心となり活動を始めた。「市民社会を発展させ、全体主義への後戻りを許さない」ことを目的とし、ソ連の秘密警察による抑圧の歴史の掘り起こしや人権擁護活動などに取り組み、ノーベル平和賞の候補に挙がったこともある。

 ただ、2000年にプーチン大統領が就任し、国民を団結させるために愛国心を強調する風潮が強まると、当局や右翼団体などから…

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