「脱炭素で復興を」 福島進出の外資が抱く思い
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10年前の東京電力福島第1原発事故で甚大な被害が出た福島県富岡町。この地で経営難に陥った断熱材販売を手がける会社の事業がこの夏、欧州のメーカーに譲渡された。外資はなぜ原発近くの小さな町を事業拠点に選んだのか。
福島での事業「全く迷いはなかった」
福島第1原発に近い富岡町。2011年3月に発生した原発事故から10年の節目を迎えた今年3月、町内を歩くと、除染作業を終えた空き地が点在する光景が目に入った。人影はまばら。廃炉や除染作業に住民の多くが携わっているせいか、中心地の商業施設を除けば、住民とすれ違うことも少ない。財務省東北財務局と福島財務事務所が7月に公表した福島県内経済の総括判断は「厳しい状況にあるものの、緩やかに持ち直しつつある」。しかし、この町で景気回復の兆しを感じ取ることはできない。
同町で断熱材を販売してきた「万象ホールディングス(HD)」から事業譲渡を受けたのは、欧米などに49拠点を持つデンマークの断熱材メーカー、「ROCKWOOL(ロックウール)」グループだ。帝国データバンクによると、万象HDは18年、放射能汚染が著しい農地を除染、造成した「富岡工業団地」内に製造工場を建てたが、設備投資費や管理費がかさんで43億円の負債を抱えた。自主再建が困難となり、取引先のロックウールに事業譲渡を打診した。
同社はこの申し出を受け入れ、福島の地に軸足を置くことを決意。同社日本法人で英国出身のイアン・ラッセル最高執行責任者(COO)は「利益だけじゃなく、復興にも関心があった。全く迷いはなかった」と振り返る。
町の人口を増やしたい
ただ、事業を立て直す舞台となる被災地の傷は癒えていない。
原発事故の避難者数は年々減少しているものの、復興庁によると、今もなお、3万人超が避難生活を余儀なくされている。新たな地を求める転出者が増えたこともあり、福島県の人口は大きく減少。生産年齢人口は全国を上回るペースで減少しており、10年から19年の間に19万人(15・4%)が被災地から姿を消した。福島第1原発に近い富岡町も深刻で、20年度の人口は1万2206人と事故前から約3600人減少している。
人材の確保が難しく、資材の調達コストもかさむ。ビジネスをするには多くの制約がある中、なぜ被災地で事業展開するのか…
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