石炭火力が9割の南アフリカ 脱「中毒」の先に見える希望
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豊富な石炭資源を元に電力の9割近くを石炭火力でまかなう南アフリカが、気候変動対策で岐路に立たされている。国際社会からの圧力もあり、政府は「脱石炭」を掲げるようになった。だが南アは政財界から労働者までが石炭産業に深く依存しており、再生可能エネルギーなどへの転換に向けた道のりは険しい。「石炭中毒」とも言われるこの国だが、煙の隙間(すきま)からは一筋の光が差し込み始めている。
「脱石炭」で失われる生活と雇用
南ア東部ムプマランガ州にある炭鉱の街・エマラヘーニ。未舗装の道を、石炭を満載した2両連結の大型トラックが行き交う。
11月中旬、地元の主婦5、6人が道路の脇に落ちている石炭をかがんでかき集めていた。掘っ立て小屋が並ぶ貧しい集落に電気、ガス、水道は通っていない。鉱山業者が「地元への貢献」として毎日、ただで置いていく石炭が、煮炊きや暖房に使う唯一のエネルギー源だ。「石炭がなくなれば生活は厳しくなる」。赤ん坊をおんぶしながら石炭を拾っていたフィグネス・シブイさん(34)は話した。
南アは世界7位の石炭産出国。石炭の採掘、運搬、発電などに直接携わる労働者は全国で約12万人に上る。失業率が30%を超える南アでは重要な雇用先だ。中でもエマラヘーニは経済活動の4割以上を石炭産業に依存する中心地。海外に輸出するほか、炭鉱のそばで火力発電所を稼働させて全国に電力を届け、「アフリカ一の工業国」といわれる南アの発展を支えてきた。
南アフリカは日本の3倍の国土に強い日差しが照りつける。再生可能エネルギーの将来性は高く、政府は石炭から再エネへの転換を目指す。ただ、…
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