抜け落ちた当事者目線 UDタクシーの苦い「記憶」とは
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障害者雇用のために設立されたトヨタ自動車の特例子会社「トヨタループス」は、コロナ禍による業務激減のピンチを、自動車の生産ラインという「本業」への参加でチャンスに変えた。連載の1回目では、その舞台裏を明らかにした。ただ、それが実現できたのは、共生社会の実現に向けてトヨタ自体が試行錯誤を繰り返してきたことが背景にある。それはいったい何なのだろうか。【山田奈緒/デジタル報道センター】
UDタクシー「障害者が使いづらい」
トヨタには苦い「記憶」がある。
近年、東京都内を中心に増えているワゴンタイプのタクシー専用車「ジャパンタクシー」。トヨタが全国ハイヤー・タクシー連合会などの協力を得て開発し、2017年秋に発売を始めた次世代タクシーだ。深い藍色のボディーカラーに、後部ドアについた東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムが目立った。
最大の特徴は、障害のある人、ない人にかかわらず利用しやすい「ユニバーサルデザイン(UD)」を採用したことだ。低床でフラットなフロアや、大きく開く電動スライドドアなどの仕様が売りだ。当然、車いすユーザーの利用は想定しており、東京オリパラでの活躍も期待されていた。
ところが、これに思わぬところから「物言い」がついた。
障害者団体「DPI日本会議」は18年秋、UDタクシーについて、ある調査結果を公表した。全国の車いすユーザー44人に、実際に流…
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