広がる「外注」ビジネス 企業が目指す共生社会のあり方

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 知的・精神障害者の「本業回帰」を進めたトヨタの特例子会社「トヨタループス」(愛知県豊田市)の取り組みは、障害者雇用のあり方に一石を投じた。連載の2回目では、それが実現した背景を明らかにした。それは「法定雇用率」が企業のアリバイ作りのように扱われ、障害のある者、ない者がともに暮らす共生社会の実現という「本質」がないがしろにされてきた社会への挑戦でもある。【山田奈緒/デジタル報道センター】

雇用率を「買う」企業

 法定雇用率が定められているのは、義務づけて強制しなければ障害者雇用が進まない現実があるからだ。

 障害者雇用の歴史は、1960年に制定された身体障害者雇用促進法に始まる。対象が身体だったのは、傷病軍人などを念頭に置いていたためだ。87年に法律から「身体」の文字が消え、98年に知的障害者、2018年に精神障害者の雇用が義務化された。

 76年に同法で定めた雇用率(1・5%)も段階的に引き上げられ、現在は2・3%になった。これを達成できない企業は、未達成の1人当たり毎月5万円を国に徴収され、改善できなければ企業名が公表されるなど、厳しいペナルティーがある。

 だが、そもそも障害者を雇うためには、職場のバリアフリー化や従業員の理解が欠かせない。加えて知的・精神障害者は、複雑な作業をすることが難しかったり、気分に好不調の波があり仕事のペースが不安定になったりすることがある。身体障害者が中心だった時代よりも「ハードルが高くなった」と考える企業は少なくない。

 そんな中で広がっているのが、障害者雇用の「外注」を請け負うビジネスだ。

 東京都内の大手人材派遣会社が運営する、都市近郊にある農業用ハウス。土や農機具を使わない簡易な方法で、知的・精神障害者がナスやチンゲンサイなどの野菜を栽培している。大勢の障害者が、間引きや水やりなど、同じような作業をする光景が広がる。

 実は、ここで働く障害者はいずれも、派遣会社の社員ではない。メーカー、流通、金融など、さまざまな大手企業の“社員”だ。

 派遣会社は、知的・精神障害者が従事できる農園のような作業場所を大手…

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