民事訴訟の審理期間に制限を設ける新たな制度の導入が議論されている。
法制審議会に提示されているのは、当事者双方が合意すれば6カ月以内に審理を終え、1カ月以内に判決を出すという案だ。
裁判にどれだけ時間がかかるのか予測できるようにして、利用しやすくするのが目的だとされる。最高裁も導入に積極的だ。
しかし、期限ありきの拙速な審理にならないか。懸念が残る。
双方が主張を展開する時間を十分に確保できず、証拠の吟味も足りないまま、結論が出される恐れがある。
個人が企業を相手に起こす裁判のように、双方が持つ情報や資料に差があるケースは珍しくない。審理期間が短くなれば、情報の少ない方がより不利になる。
途中で新たな証拠が見つかっても、早期解決が優先されてしまうことも想定される。
法制審に示された当初案では、書面の数を制限し、証拠を厳選する方針も盛り込まれていた。
反対意見が相次ぎ、これらの制限は削除され、消費者契約や労働関係の裁判には適用しないとの規定も追加された。とはいえ、問題点がなくなったわけではない。
企業からは導入を求める声が出ている。企業間の紛争を迅速に解決し、コストを抑えるためだ。
そうしたニーズに対応するのなら、新制度を設けなくても迅速な審理が可能だろう。
審理期間の制限は、民事裁判のIT化を検討する中で提案された。だが、法廷で行われてきたやりとりや書面の提出をオンライン化する取り組みとは別問題だ。
近年、民事訴訟の審理期間は長くなりつつある。結論が出るまで時間がかかりすぎる傾向は、改める必要がある。
司法制度改革の一環で、2003年には裁判の迅速化を求める法律が制定されている。
ただ、長期化を避けるためには、裁判所や弁護士の努力と、当事者双方の協力が欠かせない。審理期間を区切ったからといって、直ちに改善するものではない。
裁判の結果は判例として、社会の規範にもなり得る。審理が不十分になるようなことがあってはならない。