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日米開戦80年 自己過信の危うさ教訓に

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 太平洋戦争の開戦から80年を迎えた。旧日本軍による米ハワイ・真珠湾への奇襲攻撃で戦端が開かれ、4年後、米軍による広島と長崎への原爆投下で終戦に至った。

 戦火はアジア全体に広がり、犠牲者は日本人310万人、アジアでは2000万人を超えた。

 開戦前夜、日米の国力の差は明らかで持久戦には耐えられないとの分析がいくつもあったという。

 なぜ無謀な戦争に走ったのか。軍部の暴走、政治の機能不全、外交の失敗、メディアの扇動。さまざまな要因が重なって負の連鎖に陥ったのが実相だろう。敗戦の教訓を今に生かす必要がある。

 日米開戦を警告した著書「日本の禍機」(1909年刊)で歴史学者の朝河貫一は、日露戦争後の領土拡張政策が日本の孤立を招くと訴えた。半世紀にわたり友好関係にあった米国は日本を警戒し、「仇敵(きゅうてき)とならんとするの運命」の岐路にあると指摘した。

 だが、大国ロシアに勝利した日本は実力を過信する。自作自演の爆破事件から満州事変を起こし、日中戦争へと突き進んだ。列強支配の秩序を維持したい英米は中国を支援し、対立は決定的となる。

 対米開戦は、大恐慌による景気低迷と大国の包囲網による難局の打開が狙いだった。真珠湾攻撃に国民の意気は上がり、引き返せない泥沼の戦いにのみ込まれた。

 時代状況は今に通じる。経済的、軍事的に台頭する中国が戦後の国際秩序に挑戦し、米国は「民主主義と専制主義の闘い」と主張して中国包囲網を構築する。

 新型コロナウイルス禍で経済が疲弊し、格差が世界中で広がる。各地で排外的な論調が先鋭化し、感情的な政治的主張がソーシャルメディアを通じて増幅される。

 重要なのは、紛争を未然に回避する理性的な外交だ。協調を重視し平和的解決を目指す。その旗振り役を日本が担うべきだ。

 日米首脳が広島と真珠湾でそろって戦没者を慰霊したのはわずか5年前だ。広島では放射性物質を含む「黒い雨」を浴びた被爆者の救済がようやく決まり、ハワイでは身元不明遺骨のDNA鑑定事業が今年終わった。

 戦争の傷を癒やすには途方もない時間が要る。「不戦の誓い」が色あせることがあってはならない。

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