これまでの対決路線から「政策立案型」にカジを切ったことを印象づけたのは確かだ。
きのう衆院本会議で始まった各党代表質問に、トップバッターとして登壇した泉健太・立憲民主党代表である。
立憲は「政府・与党に反対ばかりしている」と批判されがちだった。政権を目指す政党として、そこから脱皮しようとしている点は評価していいだろう。
泉氏の質問は、枝野幸男前代表とは一変して、政権を糾弾する激しい言葉は影を潜め、新型コロナウイルス対策をはじめ、もっぱら政策の提案に力点が置かれた。
政府・与党のコロナ対策の遅れを指摘すると同時に、「18歳以下への10万円給付」の方法や、オミクロン株の感染拡大に備えた水際対策のあり方など、提案の数は17項目に及んだ。
ただし、政権批判が抑制気味になるのは、「新自由主義からの転換」など、立憲と岸田文雄首相の目指す方向性が似通っている点が多い事情があるのも否めない。
今後、どちらが新しい社会像や国家像を、具体的に国民に提示できるか。立憲は当面の課題だけでなく、長期ビジョンを競い合ってこそ、「立案型」の名にふさわしい党になる。
代表質問では泉氏、西村智奈美幹事長ともに、森友学園問題の再調査や日本学術会議の会員任命拒否問題には触れなかった。これは理解できない。
安倍晋三、菅義偉両政権の負の遺産といえる二つの問題は、民主主義の根幹を揺るがす重大事であり、今も決着していない。仮に「立憲は批判ばかりしている」という声を気にして触れなかったとすれば、全くの勘違いである。
既に泉氏に対しては、従来の立憲支持者の一部から「政権への追及が手ぬるくなる」「自民党にすり寄るのではないか」といった疑問の声が出ている。決して行政監視の手を緩めてはならない。
一方、こうした泉氏の質問に対する岸田首相の答弁は、今までの政府説明をなぞるだけだった。
野党が変わろうとしているにもかかわらず、これでは議論が深まらない。衆院選後、初の論戦となる国会である。首相も従来型答弁からの転換が必要だ。