低迷する個別避難計画の策定 「真に支援必要な人」絞り込む自治体も
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災害時に自力での避難が難しい高齢者や障害者ら「要支援者」について、具体的な避難方法を定める「個別避難計画」の策定が2021年から市町村の努力義務となった。避難計画の策定率が低迷しており、全員分を作った市町村がまだ1割にとどまるためだ。こうしたなか、要支援者の登録範囲をあえて絞り込み、災害弱者の命を救う取り組みを始めた自治体もある。【戸田紗友莉、小林慎】
倉敷市は西日本豪雨の犠牲で精査検討
要支援者の登録範囲について絞り込みを検討しているのは岡山県倉敷市だ。きっかけは18年の西日本豪雨だった。
倉敷市はこれまで①65歳以上のみの世帯(児童がいる場合も含む)②要介護3以上③一定以上の身体・精神・知的障害者④難病患者――のいずれかに該当する人を要支援者名簿掲載の要件としてきた。要件を満たすのは10万人ほど。このうち掲載を承諾した約4万人を実際に名簿に載せている。市の人口の約8%を占める人数だ。一方、個別避難計画の作成は一部にとどまっている。
倉敷市の真備町地区は西日本豪雨で甚大な浸水被害を受け、逃げ遅れるなどした高齢者ら51人が亡くなった。うち34人は要支援者名簿に掲載されていた。何人の避難計画が策定済みだったのか市は明らかにしていないが、高齢者や障害者の避難支援が課題となり、災害の専門家らでつくる有識者会議を19年9月に設置した。
その会議で指摘された問題点が、「(名簿の)掲載人数が膨大」というものだった。要支援者が多いほど、避難計画策定の負担も重くなる。会議では、…
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