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「偶然と想像」をテーマに、三つの作品を集めた短編集。「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督による、会話の活劇である。
第1話「魔法(よりもっと不確か)」。仕事帰りのタクシーの中、モデルの芽衣子(古川琴音)は、仲の良いヘアメークのつぐみ(玄理(ひょんり))がひかれているのが、自分の元カレ(中島歩)と気付く。つぐみと別れた後、芽衣子は男の元に押しかける。第2話「扉は開けたままで」では、自分を留年させた教授、瀬川(渋川清彦)を逆恨みした佐々木(甲斐翔真)が、同級生の奈緒(森郁月)を使って瀬川にハニートラップを仕掛けようとする。第3話「もう一度」は、高校の同窓会で夏子(占部房子)が仙台を訪れる。駅で女性(河井青葉)とすれ違い、ふたりは互いを同級生と思い込む。
舞台は室内、登場人物はほとんど動かず会話を重ねるだけ。日常の会話は余計なことを言い、回り道しながら進むものだ。よどみなく進む映画やドラマのセリフは本来不自然なのだが、普通は気にしない。作り物と分かっているから。しかし濱口監督の映画ではその“不自然な自然さ”が際だつ。言葉の一つ一つが鋭く意味を持ち、会話する2人の関係性を刻々と変えていくのだ。画面は静かでもダイナミックな運動が展開し、始まりと終幕の…
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