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岸田政権の税制改正 分配も脱炭素もかすんだ

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 日本経済の将来を描くうえで欠かせない政策なのに、実現に向けた道筋はかすんでしまった。

 岸田文雄政権で初めてとなる税制改正の方針が決まった。

 首相は「新しい資本主義」を掲げている。主要な目標に据えた分配の強化と脱炭素社会への移行をどこまで盛り込むかが問われた。

 ただ、決まったのは、賃金を引き上げた企業を優遇する税制の拡充などにとどまった。

 積極的に賃上げするほど減税額も大きくなる仕組みにしたが、応じられるのは主に好業績の企業だ。経営が厳しい企業との賃金格差を広げかねない。拡充は2年間に限られ、持続的な賃上げにつながることも考えにくい。

 分配政策でより重要な役割を果たす金融所得課税の強化は先送りされた。

 株式売却益などへの税率は一律20%と、給与への最高税率45%を大きく下回る。このため株式を多く持つ富裕層に有利と言われる。

 新型コロナウイルス禍では深刻な経済格差が浮き彫りになった。政府は子育て世帯などへの現金給付を打ち出したが、一時的な支援で問題が解決するわけではない。

 格差を抜本的に是正するには、きちんと財源を確保して、分配を続ける必要がある。株高の恩恵を受けている富裕層に負担を求めるのは理にかなう。首相も当初は意欲を示していたが、棚上げした。

 炭素税の本格導入も先送りされた。温室効果ガスの排出量に応じて企業に負担を求めるものだ。

 温暖化対策に積極的な欧州に比べ、日本の税率は極めて低い。政府は2030年度の排出量を13年度比で半減させる目標を掲げている。残された時間は少ない。思い切った政策と財源確保が急務だ。

 導入されると、企業の負担が増して経済成長を妨げるとの反対論がある。だが、税収を脱炭素化の技術開発に回せば、成長を後押しする効果が見込める。欧州では両立させている国も多い。

 国の基盤となる政策を進めるには、財源の手当てが不可欠だ。借金に頼ると、将来へのつけを膨らませてしまう。

 負担のあり方を議論するのは政治の役割である。来年に参院選を控え、反発を恐れて手をつけなかったとすれば、無責任すぎる。

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