「一面の銀世界、戻ってきて」 14歳・中学生スノーボーダーの夢

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スノーボードだけではなく環境問題にも全力で取り組む星更沙さん=横浜市で2021年11月11日、角田直哉撮影
スノーボードだけではなく環境問題にも全力で取り組む星更沙さん=横浜市で2021年11月11日、角田直哉撮影

 地球温暖化をはじめとした環境問題は、ウインタースポーツに影を落としている。スキー場が雪不足に悩まされるシーズンも珍しくない。そんな状況を少しでも改善しようと、一人の中学生スノーボーダーが立ち上がった。「一面の銀世界で、思いきりスノーボードを楽しみたい」という純粋な願いが、14歳の心を突き動かしている。

 「雪がほとんどなくて、所々地面が見えている部分もあった。楽しみにしていた分、悲しい気持ちになった」。東京都内の中学3年生で、環境問題に取り組む「SDGs KIDS MOVEMENT」代表の星更沙(さらさ)さんは、初めてスキー場に行った時の景色を、こう振り返る。

「スノーボードは自然と切り離せない」

 スノーボードを始めたのは小学6年生の時。元々はフィギュアスケートに励んでいたが、インターネットの動画配信サイトでスノーボードの映像を見て、高いジャンプやスピード感あふれる滑りに憧れ、ハーフパイプに取り組んだ。

 スキー場の光景に衝撃を受けたのは、2020年の冬。19~20年のシーズンは記録的な暖冬により、多くのスキー場が雪不足に悩まされ、営業中止を余儀なくされたケースもあった。「スノーボードは自然と切り離せないスポーツ。大好きなスノーボードを続けるために、冬はたくさん雪が降ってほしい」。競技者としてレベル向上を図るだけではなく、スキーやスノーボードを楽しめる環境作りについても関心を深めた。

 環境問題について考えるきっかけとなった出来事は、その直前にもあった。19年10月、台風19号の影響による大雨で星さんの自宅は浸水被害を受け、しばらく知人宅を転々とする生活が続いた。「何でこんなことが起きるんだろうと思った。自分にできるところから、何とかしたい」との思いを強くした。

環境団体発足「未来のために行動」

 そして家族や友人の協力を得て今年6月、「SDGs KIDS MOVEMENT」を発足させた。この団体では、持続可能な開発目標(SDGs)に関する多様な活動について、ホームページなどを通じて情報発信している。

 これまで星さんは、スペイン大使や寺の住職らさまざまな立場の人とSDGsについて対談をしたり、百貨店の三越伊勢丹を訪問して企業の環境問題への取り組みを取材したりするなど、精力的に活動してきた。星さんは「子供にもできることを、いろいろな人から教えてもらい、未来の地球やスノーボードができる場所を守るために行動したい」と語る。

 もちろん、ハーフパイプの選手としても、さらなる高みを目指す。普段は横浜市内の室内スキー場で練習を重ね、冬になると雪上へ。大会では目立った成績を残せていないものの、一歩一歩技術を磨き、前に進んでいる。

 好成績を残せば自らの発信力が増し、周囲の環境問題への関心も高められると、トレーニングにも熱が入る。「ハーフパイプも、環境活動も心を込めて一生懸命取り組んでいく」。まっすぐに理想の未来を見つめている。【角田直哉】

地球温暖化と降雪量の変化

 気象庁などが2020年12月に発表した「日本の気候変動2020」では、地球温暖化の国際枠組み「パリ協定」の目標を達成したとして日本の平均気温が2度上昇した場合と、追加の対策を取らずに4度も上昇したケースを基に予測。21世紀末の降雪量は、気温が2度上昇すると約3割減少(北海道ほか一部地域を除く)、4度の場合は約7割も減少(北海道の一部地域を除く)する可能性があるという。

 1962年以降の日本海側の観測データでは、年最深積雪(一冬で最も多く雪が積もった量)や1日当たりの降雪量が20センチ以上となった日の年間日数は、減少傾向となっている。

 気象庁によると、20年冬(19年12月~20年2月)の平均気温は、平年よりも北日本(北海道・東北)が1・2度、東日本(関東甲信・北陸・東海)は2・2度、西日本(近畿・中国・四国・九州)では2・0度、高かった。累積降雪量も少なく、北日本の日本海側は平年の44%、東日本の日本海側も平年の7%と、統計を開始した61~62年シーズン以降で最も少ない記録を更新した。

 多くのスキー場で休業や廃業が相次ぐ中、ウインタースポーツを…

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