今年のM-1は「安定感」VS「一発」 モグライダーに注目
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若手漫才師が芸を競う年末の風物詩「M―1グランプリ」。今年も、19日にABCテレビ(大阪市)・テレビ朝日系で生放送される。途中で4年間中断したこともあったが、2001年にお笑いコンビ「中川家」が初代王者になってから、ちょうど20年で17回目。放送作家の経験もある西条昇・江戸川大学教授(芸術学)に、M―1の意義や、今大会の優勝予想を聞いた。【油井雅和/デジタル報道センター】
M―1の放送は、19日午後6時34分から。8月からの予選を勝ち抜いてきたファイナリスト9組と、敗者復活戦による1組を加えた計10組で、決勝戦が行われる。プロ・アマ問わず、結成から15年以内の漫才師に出場資格があり、優勝賞金は1000万円。
Mー1とともに変わる「漫才」
西条さんに、まずMー1について振り返ってもらった。
――M―1が漫才界に与えた影響は大きいですね。
◆すっかり定着していますし、予選参加組数は今大会6017組で最多を更新しました。M―1の成功でピン芸人の「R―1グランプリ」や「キングオブコント」も生まれました。
1980年代の漫才ブームの後、「ダウンタウン」が登場して東京へ進出すると、きちんと漫才をやる若者が少なくなってしまいました。90年代に吉本(興業)の劇場「なんばグランド花月」(大阪市)を見ると、新しい顔は「トミーズ」と「ハイヒール」ぐらい。
それを打開しようと、吉本はプロジェクトを立ち上げ、若手の勉強会を進めるうちに、M―1の企画が生まれました。それにより、劇場にも若手コンビが増え、テレビで活躍する人気コンビなども次々生まれました。そういう意味では、当初の狙い以上の結果になっていると思います。
――昨年は「マヂカルラブリー」が王者になりましたが、彼らの芸が果たして漫才なのかどうかという「漫才論争」も生まれました。
◆今はM―1に出場する芸人がキングオブコントにも、ピンでR―1にも、あるいはピン同士でコンビを組んでM―1にも出る時代です。それぞれの芸の要素が結果的に影響し合っています。今はM―1での(ネタを披露する)制限時間イコール漫才ということだと思います。その短い持ち時間の中で何をどうやるかが「漫才」になっています。
――最近は「芸人」ではなく「お笑い芸人」という呼び方が当たり前になってきました。「漫才師」という言葉ではカバーできないということがあるようです。
◆「サンドウィッチマン」の登場(07年のM―1王者)以降、「コント師」という言葉も出てきて、今では定着していますが、昔はそんな言い方ではなくて「コメディアン」でした。今はこの言葉が死語になっていますが。
M-1の短い持ち時間でやっているせいか、サンドウィッチマンのように「僕なになにやるから、君なになにやってくれるか」とキャラクターを決め、すぐにネタに入る一つの型みたいのが目立っています。それを最近は「コント漫才」と呼ぶらしいです。
これまでの「しゃべくり漫才」にも、設定したキャラクターを演じる部分がありましたが、あくまでもネタの一部でした。そうではなく、ネタの最中、演じているキャラのまま通して、そのままツッコむなどするスタイルは、サンドウィッチマンの影響です。M―1が続く間に、漫才も変わってきているということでしょう。
初進出組が多い決勝戦にワクワク
――さて、今年のM―1ですが、準決勝で知名度の高いコンビが敗退し、決勝初進出の組が5組と多い大会になりました。
◆常連より新鮮さの方を取ったのでしょう。思い切った選考で、ワクワク感があります。2回、3回と決勝に残るコンビの安定感は視聴者も分かっています。賞レースの場合、まだ知られていないコンビがどーんと出てくると盛り上がります。敗者復活枠から優勝したサンドウィッチマンのように。
あと今回は、関西弁のコンビが少ないのも特徴です。関西弁の漫才は、パワフルさというか、押しというかがあって、コンテストの場では強いところがありますから。
――注目のコンビはいますか。
◆これまで決勝に出場し、印象に残っていて安定しているのは…
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