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大阪のビル火災 惨事招いた原因の究明を

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 大阪市内の中心街でビル火災が起き、多数の死傷者が出た。大阪府警は放火事件とみて、捜査を進めている。

 火事は約30分間で消し止められた。にもかかわらず、多くの犠牲者が出た。なぜ、これほど被害が拡大したのか、原因の究明が急がれる。

 市消防局によると、8階建ての雑居ビル4階にある心療内科のクリニックから出火した。犠牲者は4階にいた可能性が高い。

 クリニックは患者らの職場復帰を支援するプログラムを実施していた。大部屋で開かれ、20人ほどが参加していたという。この日も多くの患者が集まっていた可能性がある。

 捜査関係者によると、クリニックの男性患者が可燃性の液体を持ち歩いていたという目撃情報があるという。

 男性の特定を急ぎ、火災との関係の有無を明らかにしなければならない。

 問題はなぜ、被害の拡大を食い止められなかったかだ。

 大阪の現場ビルは消防局の定期検査では、消火器や自動火災報知機、誘導灯などに不備はなかったという。

 それならば、出入り口や階段など避難手段が確保されていたのか、徹底的な検証が求められる。

 現場は飲食店などが多く集まる北新地の繁華街の一角だ。延焼していれば、被害がさらに拡大する恐れがあった。

 不特定多数の人が出入りする都市部の雑居ビルでは、過去にも火災で多くの犠牲者が出ている。

 2001年9月に東京都新宿区歌舞伎町で起きた火災では、入居施設の客や従業員ら44人が一酸化炭素中毒などで死亡した。放火の疑いもある。

 ビル内の通路や階段に荷物が置かれていたため、防火扉が閉まらず、被害を広げた。

 この火災をきっかけに消防法などが改正された。小規模雑居ビルでも自動火災報知設備の設置が義務付けられ、防火対策は強化されたが、被害は防ぎ切れていない。

 罪のない多くの人が突然の惨事に巻き込まれ、一瞬にして人生を奪われた。悲劇を繰り返さないよう、火災の全容を解明する必要がある。

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