歌だけでなく知識も さだまさしさん、「不安」に寄り添う支援の形
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新型コロナウイルスの感染拡大による自粛生活や、東日本大震災、豪雨といった自然災害などで苦しい状況に追い込まれた時、人々は歌に希望を求めた。ジャーナリストの池上彰さんが、シンガー・ソングライターのさだまさしさんと初めて対談し、被災地の支援活動や歌作りの思いについて語り合った。【構成・瀬尾忠義】
池上 コロナ禍でのさださんの行動や考えをまとめた著書「緊急事態宣言の夜に」では「不景気になると、さだまさしがもてる」と振り返っています。
さだ そうなんですよ。バブル経済が崩壊した1990年代にも、もてました。ところが21世紀を迎える前後の「ミレニアム」騒ぎでは相手にされなくて。それが、パンデミック(感染症の世界的大流行)になると、皆さんが「さだの歌を聴きたい」とまた言ってくださる。だから、しゃれで僕はこう言っています。「普段から聴いてくれ」って。
なぜ、世の中が大変になると僕の歌を聴いてくれるのかを考えました。僕は常に、命に対する不安、社会に対する不安、人生に対する不安を、歌詞に入れ込み、体温として伝わるよう努力してきました。歌詞の端々に潜んでいる体温の部分に皆さんが反応してくださるのかもしれません。
池上 最近は、どのような歌を多くリクエストされましたか。
さだ 昨年多く聴いていただいた歌は「奇跡」です。91年の雲仙・普賢岳(長崎県)の大火砕流発生の年に書いた歌です。70年代に作った「主人公」も最近、突如としてもてはやされました。近年作った歌の中では、2000年代の「いのちの理由」です。
池上 法然上人の800年大遠忌記念のイメージソングとして浄土宗から依頼された曲ですね。
さだ 依頼を受けた時、僕は「そんなに大切な曲を僕が作ってもいいのですか」と京都の知恩院まで聞きに行きました。「うちは代々、浄土真宗ですけども」とも伝えて。そうしたら「好きに作ってもらって構いません。20年たっても歌われる歌にしてください」と。浄土宗は懐が深いと感激したのと同時に、一番難しい注文を受けたのです。お陰様でこの歌も、皆さんから「歌ってほしい」「歌わせてほしい」と言われる歌になっています。
池上 命のことを考える。宗教では大切なことですからね。
さだ 命の正体はいくら考えても分かりません。僕は9歳の時、かわいがってくれた祖母を亡くし、1週間泣き通しました。死ぬということに子どもながらに恐怖心はありましたが、祖母には幽霊になって会いに来てほしいと願うようになりました。それ以来、幽霊は怖くなくなり、自分もいつかは死を迎えるんだと理解するようになりました。
実は、20…
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