ふるさと納税で住民税流出 都市の策は「説得」か、「後押し」か
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ふるさと納税で都市が焦っている。住民が他の自治体に寄付すると、その分、本来入るはずだった住民税が流出する仕組みだからだ。高齢者施設の整備、ごみ収集……。このままだとできなくなることを挙げて住民に訴えるが、流出は止まらないどころか加速する。巻き返しへの策はあるのか。(第3回/全6回)
東京都世田谷区役所のロビーでは、2カ月前の区報が今も手に取れる。
「70億円が流出‼」と他の自治体に流れた税額を示す太字の見出しが躍り、「住民サービスに使えるはずだったお金です」と区民に訴える。通常号とは別の「ふるさと納税特集号」。年1回発行し、新聞折り込みなどで各戸に配布していると区の担当者は言う。
読んだ住民からは「おかしな制度だと分かった」と納得する声の一方、「世田谷もお礼の品を充実させて稼げばいいじゃない」という意見も寄せられた。「そんな中でも普段から一番多いのは……」。そう切り出し、担当者は落胆する。「『自分の控除額の上限がいくらなのか』という問い合わせ。他の自治体に寄付したいということなのだろう」
ふるさと納税で他の自治体に寄付すると、住民税などが控除(軽減)される。居住自治体にとって、本来入るはずだった税金が他の自治体に流出する形で減収となる。
人口約92万人と政令市並みの規模を誇る世田谷区の流出額は、拡大の一途をたどる。…
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