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毎日新聞朝刊1面の看板コラム「余録」。▲で段落を区切り、日々の出来事・ニュースを多彩に切り取ります。

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小箱を持った若者たちが街頭に立つ…

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 小箱を持った若者たちが街頭に立つ。足を止め、財布からいくばくかの小銭を投じる人。励ます人もいる。春と秋の風物詩となっていた「あしなが学生募金」が今月、2年ぶりに再開された▲コロナ禍に翻弄(ほんろう)され、昨年は50周年の記念街頭募金をあきらめた。今回も感染防止のため呼びかけを控えた地区がある。元気な声に代わって当事者の訴えを書いたパネルが静かに窮状を伝えた▲あしなが運動は、交通事故から自死や災害にも対象を広げ、遺児の学びを支えてきた。これまでに11万人が奨学金を受け、進学の夢をかなえた。コロナ禍では緊急支援として6500人の奨学生全員に15万円を贈った▲保護者に実施したコロナの影響調査では、5人に1人が離職や転職を経験していた。今年の平均月収は10万円あまり。「第5波」さなかの9月には、4人に1人が無収入だった。「光熱費節約のため我が子はショッピングモールのベンチで勉強した」「壊れた給湯器を買い替えるか大学の進学費用に充てるか悩んだ」▲こうした悲鳴が届いているのか。18歳以下への10万円相当給付を巡る政府の混乱ぶりである。一刻も早く支援すべき夏に国会を開かず、秋は政局に明け暮れた。「1匹の魚を家族4人で食べている」家庭があるというのに▲消費喚起をもくろみ5万円分は期限つきのクーポン。巨額の事務費まで計上し、来夏の参院選対策をにらんで配布は春などと聞けば、ますます鼻白む。声なき声に耳を澄ますのが政治ではないのか。

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