北海道から東北にかけての太平洋沖で、巨大地震が発生した場合の被害想定を国がまとめた。
日本海溝沿いと千島海溝沿いでマグニチュード9級の地震が起きたと想定した。最悪の場合、死者はそれぞれ約19万9000人と約10万人に上る。大半は津波によるものだという。
避難に時間がかかる冬の深夜に発生するケースだ。すぐに避難できた人が2割にとどまるという条件も加えて推計した。
関連死を含め約2万2000人が犠牲になった東日本大震災をはるかに上回る数字だ。
ただ、十分な備えを講じることで死者を8割減らせるとも試算している。
とりわけ重要なのは、住民一人一人が意識を高め、迅速な避難行動を取れるようにすることだ。自治体は、津波避難ビルの整備や建物の耐震化などを着実に進める責任がある。
対策を立てる上で気候や地形などを考慮することも欠かせない。
北海道も東北も冬の寒さが厳しい。積雪で道路がふさがっていたり、避難所が遠かったりして、近くの高台や公園などに逃げる人もいるだろう。着の身着のまま屋外で長時間過ごせば、低体温症のリスクが高まる。
そうした場所に、防寒具を置いた備蓄倉庫を整備すれば、命を守ることにつながる。
避難道路の整備も急がれる。北海道東部の沿岸域は高台が少ない。津波が及ばない場所まで車で逃げる人が大勢いることも念頭に、計画を立てる必要がある。
地方は高齢化も進んでいる。災害弱者を取り残さないためには、共助・公助の仕組みが不可欠だ。
今年から、高齢者や障害者らの「個別避難計画」の作成が市町村の努力義務となった。一人一人について避難する場所やルート、支援する人などを定めるものだ。
自治体と住民が連携し、地域ぐるみで災害弱者を守ってほしい。
日本列島は地下で4枚のプレートがせめぎ合う地震の巣だ。南海トラフ地震や首都直下地震の発生も懸念されている。いつ、どこで大地震が起きるか分からない。
リスクと隣り合わせであることを直視し、防災・減災対策を進めるきっかけとしたい。