「まるで途上国」? TSMC誘致に見る日本のお寒い半導体事情

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台湾企業「TSMC」の半導体工場建設予定地=熊本県菊陽町で2021年11月20日午後0時51分、本社ヘリから上入来尚撮影
台湾企業「TSMC」の半導体工場建設予定地=熊本県菊陽町で2021年11月20日午後0時51分、本社ヘリから上入来尚撮影

 半導体の世界的大手「台湾積体電路製造(TSMC)」の日本進出が決まった。後押ししたのは、一企業、それも外資に約4000億円もの税金を投じる異例の補助金だ。ただし、TSMCが日本で製造するのは、最先端とはいえない汎用(はんよう)型。それでも政府が「経済安全保障に役立つ」と説明する背景を探ると、世界で激しい半導体争奪戦が繰り広げられる中で、かなりお寒い日本の事情がみえてきた。

 あらゆる電子機器に使われる半導体は「産業のコメ」と呼ばれる。米中対立が供給網(サプライチェーン)の分断を引き起こす中、半導体は経済安全保障上の重要物資として位置づけられるようになった。

台湾TSMCが経済安保「台風の目」に

 そこで台風の目となっているのがTSMCだ。台湾政府傘下の工業技術研究院の半導体開発プロジェクトを民間移転する形で、1987年に設立された。他社が設計した半導体の製造を請け負う「ファウンドリー(受託製造)」というビジネスモデルを確立し、半導体業界で設計と製造を分業する潮流を作った。

 受託製造の世界シェアは5割強。それを支えるのは高い製造技術だ。デジタル機器の中核部品となる「ロジック半導体」は、どれだけ微細な回路を作れるかが性能を大きく左右する。その目安となる「回路幅」について、TSMCは2020年、世界に先駆けて5ナノメートル(ナノは10億分の1)の半導体の量産化を開始。まさに質と量双方で世界トップの地位にある。

 一方で、台湾は中国との緊張関係が高まっている。米半導体工業会(SIA)の報告書によると、10ナノメートル以下の先端半導体の製造拠点の92%はTSMCを筆頭に台湾にあり、残り8%はサムスン電子のある韓国だ。仮に中台間で軍事衝突が発生した場合、先端半導体の供給が途絶える可能性が高く、産業面だけでなく、人工知能(AI)を駆使するミサイルなど軍事面でも不利になりかねないとの懸念がくすぶる。

 そこで、日本を含めた各国はTSMCなどに自国内に生産拠点を設けるよう、巨額の財政出動を誘い水にして誘致合戦を繰り広げてきた。萩生田光一経済産業相もTSMCの日本進出に「わが国のミッシングピース(欠落した部分)を埋めるもの」と歓迎してみせた。

2軍レベル?TSMCが生産する半導体

 しかし、TSMCが熊本県に新設する工場で製造するのは、回路幅22~28ナノメートルの半導体で汎用型にとどまる。TSMCが米アリゾナ州に建設予定の工場は最先端の5ナノメートル以下の生産を予定しており、日本の工場はいわば「2軍レベル」(業界関係者)の半導体だ。

 この違いは、…

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