演劇 さいたまゴールド・シアター「水の駅」 沈黙の中に豊穣な時=評・濱田元子

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
さいたまゴールド・シアター「水の駅」=宮川舞子撮影
さいたまゴールド・シアター「水の駅」=宮川舞子撮影

 せりふは一切ない。しかしなんと多くの声が聞こえてくるのだろう。蜷川幸雄が創設した高齢者演劇集団による15年間の活動の集大成だ。太田省吾の沈黙劇が、人生を積み重ねた肉体が放つ表現のリアルと交わり、豊穣(ほうじょう)な時を紡ぐ。杉原邦生構成・演出・美術。

 舞台中央手前にポツンとある、取っ手の壊れた水栓と水槽。広大な宇宙を感じさせる大ホールの空間を支配するのは、チョロチョロと流れる水の音だ。

 バスケットを手にした少女が現れ、赤いコップを取り出して水を飲む。そこから始まる物語は、なんらかの渇きを抱えた人々が次々と水場を訪れては、またどこかへ去っていくという繰り返しだ。

この記事は有料記事です。

残り446文字(全文730文字)

あわせて読みたい

ニュース特集